最近、人生初の昆虫食に挑戦した。コオロギを練り込んだ麺とコオロギからだしをとったスープ。仕上げに素揚げのコオロギを添えた、コオロギラーメンだ。生臭さは全くない。濃厚なスープもあっという間に飲み干してしまった。
思えば、私と虫との距離感は成長とともに変わってきた。双子の兄と一緒に育ち、小学生の頃は昆虫のキャラクターが登場するアニメやゲームに没頭。兄妹で少年野球クラブに所属し、試合後には球場のそばでセミ捕りをした。
だがある日、誰かが言った。「普通、女の子は虫が嫌いなのにね」。自分が普通じゃないと言われたようで、それから虫嫌いを演じ始めた。やつらを見つけたら怖がろう。写真も気持ち悪がろう。そう意識するうち、いつしか本当に見るのも触るのも怖くなった。これで私も普通の女子だ。ホッとしたのを覚えている。
その後、進学した緑豊かな大学には、虫が嫌いな男子学生も大好きな女子学生もいた。好みは人それぞれ。違って当たり前だと心から思えるようになった。周りに流されてできた「嫌い」にとらわれるのはもうやめよう。かつての友だちの新たな魅力が見つかるかもしれないと、昆虫食に挑んだのだった。
嫌いになるのは案外簡単だ。また向き合うのには時間がかかるのに。虫以外にも、嫌いだ好きだと思い込んでいただけのものがあるかもしれない。改めて自分を見つめ直そう。空になったラーメンのどんぶりに、たくさんの学びが詰まっている気がした。【筑波大・西美乃里】