先月18日に発売された「マンガで楽しくチャレンジ! 東大パズルドリル」(幻冬舎)。かわいらしいイラストが目を引く、小学生向けのパズル本だ。問題を制作したのは「東京大学ペンシルパズル同好会」のメンバーたち。中心となって本を作った東京大医学部3年の窪田壮児さん(20)と同大経済学部3年の谷政一郎さん(20)。中学校、高校時代からの同級生でもある2人に話を聞いた。【東京大・高橋瑞季】
――そもそもパズルに夢中になったきっかけは?
谷 小4の時に、毎日新聞に掲載されていた数独を解いてみたのがきっかけ。元々、祖父がその数独を楽しんでいた。そして中高とパズル同好会に所属し、解くだけでなく創作にものめり込んだ。
窪田 自分も小学生時代に数独を解いたのが初め。その後中1の時に、視覚的にきれいなパズルに出合い衝撃を受けた。自分もそんな問題を考え出したいと思い、谷と同じ同好会に入った。
――中高時代はどれくらい制作していましたか。
谷 平均して年間1000問ほど。
窪田 400問くらい。創作だけでなく、どれだけ速く解けるかを競う「世界パズル選手権」にも出場した。世界のパズルに触れ、刺激を受けた。
谷 海外のものは日本とどういった点で違うと感じた?
窪田 たとえばドイツには、2種類のパズルのルールを複合させたものなどがあり、複雑だけど奥深い。また海外では、個人が問題を作り投稿するサイトも昔からあり、多くの人に広める観点からも参考になる部分がある。
――中高時代からたくさん創作し続けてきたのですね。今回のドリルはどういった経緯で出版されたのでしょうか。
窪田 自分たちが所属する東大の同好会は、年に2回ある大学の文化祭でパズルの冊子を作り、配布している。出版社の方がその冊子に目を留め、ドリル出版につながった。今回の本の作成に携わったのは同好会メンバー10人ほど。自分は問題を集めて解き、順番を考えるマネジャーのような立ち位置だった。
谷 自分は窪田の呼びかけに応えて作成に関わった一人。しりとりと掛け合わせたパズルやイノシシを脱出させるパズルなどを提供した。
――子ども向けの本ならではの苦労もあったのでは。
窪田 難易度の調整が大変だった。難しすぎると諦めてしまうが、簡単でも飽きられてしまう。
谷 子ども向けとはいえ、大人も頭をひねる作りになっているので多くの人に解いてほしい。
――制作で大事にしていることやこれからの目標は?
谷 とにかく質の良いものを提供したいと思っている。コンピューターで問題を量産できる現代、人が作るからこその面白さを追求したい。「こう解こうとする人が多いだろうから、こう作って驚かせよう」と、解き手との心理戦が生まれるようにしている。
窪田 確かに、手作りならではにこだわりたい。きれいな見た目で楽しませる問題も、人だから作れる。
谷 将来的には多くの人がパズルに触れられる環境も整えたい。インターネットやアプリでの配信、それらの宣伝まで含め工夫していけたら良い。
――「パズルが好き」を超えて、「その楽しさを広めたい」という熱い思いが伝わってきました。
谷 中高時代に比べ、今は数よりも、新しい種類のパズルを生み出すことに重点を置いている。制作数は年間100問ほど。また、自分はこれまでに個人でもパズル本を出版したことがあるが、読者が何を求めているかという意識を持つようになった。
窪田 谷はそのように解き手のことを深く考えられている点がすごい。初心者の目線にもきちんと立っている。一方、自分はやはり、見た目のきれいさを追求している。最後まで完成させる数は、今は年間20ほど。
――お互いがお互いの強みを尊重し合っているのですね。
窪田 先ほど言ったことに加え、谷の考える問題は緩急のバランスが魅力だ。解く際にはスラスラ進む瞬間と、じっくり考え込む時間の両方があるが、そのバランスが良い。また面白いものを考える視点だけでなく、それを解き手に届ける視点も持っていることに刺激を受ける。
谷 窪田は解く数も多いので、とにかく知識が豊富。「歩くパズル事典」だと感じている。新しいパズルを考えついた時には、これまでに同じものがなかったか、彼に確認すれば間違いない。また彼はつまらないものに対しはっきりとそう言ってくれるので、とても信頼を置いている。
窪田 中学からずっと一緒に頑張ってきたので、信頼は厚い。
――切磋琢磨(せっさたくま)することで、より魅力的なものが生まれるのですね。これからも面白いパズルを多くの人に届けてほしいです。ありがとうございました。