先日、23回目の誕生日を迎えた。成人した当初は、ふわふわと子ども気分が抜けなくて、その幼さが恥ずかしかった。周りを見れば、1人暮らしで生活を切り盛りする友人、フルタイムで働いて生活費や学費を稼ぐ友人。実家暮らしで、精神的にも物理的にも親に頼り切りの自身とのコントラストはまぶしく、己の未熟さが格好悪かった。
だからこの数年間は、早く大人になりたい一心だった。中高生の頃は母が毎日作ってくれたお弁当。しかし、大学で昼食が必要な日は、母にいくら作ると言われても自分で用意するようになった。
内定を得たのは地方勤務が約束された職で、私は来年実家を出る。家族に誕生日を祝ってもらえるのは、今年が最後かもしれなかった。渡された誕生日カードには、両親の字が並んでいた。「これからは少し後ろから見守っていくよ」「これからもいろいろあるだろうけど、あなたなら大丈夫」。大人にならなきゃ。夢中で走り続けてきた道を振り返れば、いつの間にかずいぶん遠くまで来ていた。いよいよ本当に、独り立ちする時がきたのだと気が付く。
寝坊した朝、母がまた「作ろうか」と声をかけてきた。あと何度、母のお弁当を食べられるだろう。そう思うと頼りたくなって、素直にうなずいた。いそいそと作り始めた母の顔はどこか満足そうで、私は笑いたいような泣きたいような気持ちになる。あと少しだけ、甘えさせてほしい。子どもでいられる時間は有限なのだから。【上智大・石脇珠己】