先日、母が伯母とともに長崎県西海市へ向かった。高齢になった母方の祖母が来年、東京の伯母の家に移り住むことが決まったため、家の片付けを手伝いに行ったのだ。母が持ち帰ったカステラやミカンをほおばりながら土産話を聞くうちに、昔の思い出がよみがえった。
祖母が暮らす母の実家を初めて訪れたのは保育園の年長の夏。海と山に囲まれ、セミが狂ったように鳴く環境に心が躍った。しかも祖母の家はスリル満点の世界だった。トイレに行こうと障子を開けると、頭上から握り拳ぐらいのクモが降りてくる。廊下にはムカデがいて、発見すると祖母がすかさずスプレーを噴射し、捕まえてトイレに流す。布団を敷くとナメクジが布団の上をはっていたなんてこともあった。
楽しい思い出も多かった。親族手作りの郷土料理のすしをごちそうになったり、いとこと庭先の木から段ボールいっぱいカブトムシを捕ったり、海や鍾乳洞を訪れたりするなど、疲れ果てるまで遊んだ。東京で暮らす自分にとって驚きの連続で、世界が大きく広がった気がした。
確か周辺には城跡や、太平洋戦争開戦時に真珠湾攻撃を命じる暗号文を中継したといわれる旧佐世保無線電信所など、史跡や戦争遺跡もあった。新しく訪れる場所もいいが、時を経て再訪する場所にも新しい発見があると思う。親族が皆そこに暮らし続けるとは限らない。自分も社会人になればいつ行けるか分からない。親族に会いに、学生のうちにまた訪ねたい。【明治大・山本遼】