箱根駅伝からさらなる高みへ 法政大・松本康汰、悔しさ糧に臨む

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 1月2、3日に行われる第99回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)。毎年、注目チームや選手を取材し、紹介してきたキャンパる編集部は今回、8年連続83回目の出場で、上位入賞の実力を持つ法政大学に注目。練習の雰囲気がよい同校の主力メンバー3人に、大会にかける思いを聞いた。3人目は、持ち前のスピードでチームを勢いづける松本康汰(こうた)選手(4年)だ。【中央大・朴泰佑(キャンパる編集部)】

 「最後の箱根駅伝になるので、今までより思いはずっと強い。これまで支えてくれた人たちへの感謝を、走りで体現したい」。ケガによる雌伏の1年を乗り越えた松本選手が、最後の箱根駅伝に挑む。

 愛知県出身で、小学生の駅伝大会で仲間と走る駅伝の楽しさを実感し、陸上を本格的に始めた松本選手。小学校が同じで、当時の駅伝大会でたすきをつないだ法政大OBの佐藤敏也さん(2020年3月卒)=現トヨタ自動車所属=とともに走ることを目指し、同じ法政大に進んだ。「自分と同じスピードタイプで、共通点が多い」佐藤さんに、強く憧れと親近感を抱いていた。

大学グラウンドで、法政大の頭文字「H」ポーズを見せる松本選手=法政大多摩キャンパスで、千葉大・谷口明香里撮影
大学グラウンドで、法政大の頭文字「H」ポーズを見せる松本選手=法政大多摩キャンパスで、千葉大・谷口明香里撮影

 そんな松本選手が頭角を現したのは2年生の時。20年10月の箱根駅伝予選会ではハーフで1時間3分9秒と、自己ベストを更新した。これまでの自身のキャリアを振り返って「あの予選会が一番楽しい大会だった」という。予選の勢いを買われ、本大会にも出場。法政大学の次期エースとしての期待も大きかった。当時の心境について「プレッシャーも感じていたが、それよりも期待に応えたかった」と話してくれた。

 自負するとおり、スピードに定評がある松本選手。「400メートル走10本などの地道な練習がスピードを鍛える練習になっている。他にもスピードが武器の選手はいるので、その選手たちと競い合いながら練習に励んでいる」と、強さの理由を教えてくれた。

 しかし、松本選手にとって21年は苦難の年となった。1月にケガをした影響で、5月ごろまで走ることができなかったという。夏合宿からなんとか練習に合流したが、ケガの影響が続き、箱根駅伝予選会でも不振。3年生での箱根駅伝出場はかなわなかった。「22年の箱根駅伝はただ応援しているだけで、悔しかったです」と険しい表情を見せた。

 そんな松本選手の支えとなったのは、連絡をくれたり、気分転換に外に連れ出したりしてくれた家族や友人たちの存在だ。「周りの人たちの支えがあったのはありがたかった。そのおかげでケガを乗り越えられた」と話す。

 復調して迎えた22年10月の出雲駅伝。1区(8キロ)で出場した松本選手は、区間6位という自身の出来について「10点満点で6点ぐらい」と自己採点した。「ギリギリ流れを作れたので及第点ではあると思っている。けれど、先頭争いを目標にしていたので、そこに届かなかったことに実力のなさを感じた」と悔しさを口にした。

 箱根に臨むチームの雰囲気については「今いるメンバーは、みんなで一緒に頑張ろうという思いが強い」と話す。「しっかり結果も出しているし、最上級生として総合5位というチームの目標に貢献したいと思っている」と、箱根に臨む決意を口にした。

 松本選手が希望する区間は、自身のスピードを最も生かせる2区と3区だ。ケガに泣かされた悔しさ、そして結果に満足できなかった出雲駅伝での悔しさを糧に、チームをけん引する存在になるべく練習を積んできた。2年ぶりに出場を目指す箱根駅伝。「この大きな舞台で、自分が走ってチームの流れを作りたい」と意気込みを語った。

 卒業後は花王で実業団選手として陸上を続ける予定だ。「自分でもここまで陸上を続けるとは思っていなかった」と話す松本選手。ケガを乗り越え、陸上を続けることを決断したその表情からは、大学をゴールとせず、さらなる高みを目指す覚悟が垣間見えた。

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