すたこら 拝啓、すけっちさん

すた・こら

 忘れられない人がいる。7年前に出会った自称「すけっちさん」。短髪のメガネのおじさんで、大きなビデオカメラを常に担ぐ。朗らかな声と、日に焼けて若々しい笑顔がすてきな方だった。

 高1の夏、高校生対象の国際協力について学ぶ5泊6日のプログラムに参加した。その初日。「僕のことは“すけっちさん”と呼んでね」。番組名を冠したあだ名を名乗り、取材のために一人現れた。私たちが悩み、考え、学びを深める様子を短編番組にしたいのだという。

 発展途上国のために何ができるか、豊かさとは何か、同世代と語り合う。青年海外協力隊として飛び立つ大人たちと食卓を囲み、生き方に触れる。その様子を、毎日のように訪れては面白がりながら丁寧に撮ってくれた。

 「さっきの議論どうだった?」「今どんな気持ち?」。彼の問いかけにたどたどしくも言葉を返す中で、曖昧だった思いが不思議と形になっていく。「いろんなことに敏感でいたい。見過ごしたくないなって」。番組で取り上げられた私の言葉は、今も自分の原点だ。

 ただ、すけっちさんとはそれ以来会えていない。連絡先も、本名も知らない。

 先日、就職活動を終え、ふと彼のことを思い出した。拝啓、すけっちさん。今どこで何をしていますか。私はあの取材が忘れられず、ドキュメンタリー製作の門をたたきました。話を聞くことで誰かの思いに寄り添いたい。撮ることでその一瞬を残したい。あなたのような取材者を夢見ています。【上智大・川畑響子】

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