すたこら 秘密基地

すた・こら

 最近のマイブームは、母校の小学校の裏にひっそりとたたずむ居酒屋に通うこと。朽ちかけた屋根、文字がはがれかけた看板。そんなお店に毎晩、母校の卒業生が詰めかける。進学先も勤め先も関係ない、地元愛あふれる「仲間たち」だ。

 この店に集まるようになったきっかけは、コロナ禍だった。東京の大学はオンライン授業になり、大学の友人とは少しずつ疎遠に。その一方で関わりが増えたのが、地元の友人たちだった。茨城県の片田舎で、生徒数もそれほど多くないこの地域では、幼い頃から皆、仲間意識が強く、家族のように温かい。この店を「秘密基地」と呼び、20歳を超えた男たちがたわいもない話で盛り上がっている。

 昔話に花を咲かせるうちに、大切なことを認識させられた。それは「何気ない日常」が最も幸福だということ。小学生時代に好きな子を取り合ってケンカしたこと、中学生時代に部活の帰りに寄り道したこと。心も体も未熟だった当時だからこそ、見る世界の全てが新鮮で、どんなことにも一生懸命だった。今では皆、良い思い出だ。

 漠然とした不安を抱えながら過ごす今の生活。しかし旧友と話すうちに、「こんな日々でも楽しい」と思えるようになった。気になった映画を見る。髪形を少し変えてみる。そう、新鮮な思いを味わえることは、今もいろいろある。幸せを感じるのはそんな瞬間を集めた結果なのだと思う。「今日は楽しかったよ。また飲もう」。最後にそう言い合って、それぞれが家路につく。【国学院大・原諒馬】

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