今月25日、「刑法ポーカー」が通販サイト「アマゾン」で発売された。制作は伊藤誠悟さん(22)。昨年度まで所属した慶応大法学部法律学科、和田俊憲研究会の卒業制作作品が、商品化に至った。
刑法では、犯罪が成立するには、その犯罪を構成する諸要素である「構成要件」を満たす必要があるとされる。殺人罪であれば「殺人の実行行為」や「人の死亡という結果」というのがそれだ。
刑法ポーカーは、構成要件を記したカードをそろえて「役」である犯罪をつくり、最も重い犯罪をつくったプレーヤーが勝つゲーム。役の強さも、実際の刑罰の重さによって順序がつけられる。ゲーム内で最も強い役である「強盗致死罪」をつくるには、「強盗」や「死亡結果」「不法領得の意思」など、同罪を成立させるための構成要件カードをそろえる必要がある。
伊藤さんが制作を始めたのは去年の秋。構想を思いついてすぐにゲームの大まかなルールは出来上がったが、強い役が簡単にできないようにするなど、ゲームのバランス調整には苦労したという。友人たちとプレーを繰り返し、各カードの枚数などを調整していった。商品では18種類、54枚のカードを使う。
刑法を学ぶ者にとっては基礎である構成要件。そんな構成要件を、遊びながら学べる刑法ポーカー。伊藤さんは、多くの刑法に関心のある人に手に取ってほしいと話す。複数の「役」(犯罪)をつくるなどの複雑なルールを省いた「未修コース」と、難しい「既修コース」に分かれており、幅広い層が楽しめるようになっている。
記者たちも、伊藤さんに教わりながらプレーしてみた。法律に詳しくない理系の学生でも、数回やればルールを覚えることができ、難しい「既修コース」も楽しむことができた。
今年度からは、東京大大学院法学政治学研究科に進んだ伊藤さん。子供のころに足利事件や映画「それでもボクはやってない」を通して冤罪(えんざい)事件を減らしたいとの思いを持ち、法曹を志した。伊藤さんは、今後の派生展開も視野に入れている。多様な類型があり、今回はゲームに含まなかった放火に関する犯罪のみを役とするものや、逆に弁護側として無罪を目指すものなども構想しているという。
刑法ポーカーの価格は2200円(税込み)。ゲームを通して、楽しく刑法を学んでみてはいかがだろうか。【東洋大・佐藤太一、写真は津田塾大・畠山恵利佳】