「これから先一生会わなくても、それはそれでいいのよ」。最近見たドラマの、ある別れのシーンでのセリフだ。これは相手を突き放しているわけではない。「二度と会うことがなくても、一緒に過ごした時間はなくならないでしょう」。だから「それでいい」のだ。
この感覚には覚えがある。私は幼稚園から小学校時代にかけて、引っ越しを繰り返していた。当時は「別れ」が怖かった。あんなに一緒に遊んだのにもう会えないなんて。そう思うと言いようのない不安に襲われた。
そして時は流れ大学生になり、小学校時代の友人と8年ぶりに再会する。久しぶりだったが、意外と普通に話すことができた。でも同時に胸によぎった「あの頃とは変わったな」という思い。楽しい時間を過ごしたけれど、次会う約束はしなかった。8年という空白は、昔のように全力で話をして全力で笑いあうには長すぎて「また会おうね」と気軽に約束することはできなかった。
けれど今は「次また会うことはあるのかな」という問いを、胸の中で繰り返すことはない。かつての友人が同じ空の下にいる。そう思うだけで、何だか勇気が湧いてくる。
だから「これから先一生会わなくても、それはそれでいい」のだ。思い出すと胸が温かくなる大切な日々は、たしかに存在し続け今も私を強くする。「別れ」は決して、全てが無になることではない。そう思えるくらいには大人になったのだろう。【東京大・高橋瑞季】