「4年間でその後の人生につながる最善の道を選ばなきゃいけない」。大学入学時はそう考えていた。最初は、高校生の時に打ち込んでいた演劇のサークルに入ろうと思った。舞台上でスポットライトを浴びた経験をまた味わうのも良いかも。だが将来役者になりたいわけでもない。就活に有利になるからと運動部に入部。安易な気持ちで始めた分、案の定長くは続かなかった。
大学生活も残り6カ月。未練があるとすれば、もう一度舞台に立ちたい。そう思っていた時、思いがけない機会が訪れた。友人の紹介で、ミュージカルサークルの公演に役者として誘われたのだ。後悔はしたくないと参加を決めたが、考えてみると不安だらけ。歌のレッスン経験はない。演技もおよそ5年のブランクがある。
今は稽古(けいこ)が始まり、好きなことができる喜びを実感している。全身で表現する楽しさ、自分ではない誰かになれる面白さ。歌唱指導の学生から十数本ある楽曲の一音一音をたたき込まれるのも、大変であり新鮮な経験だ。壁にぶつかることも多いが、周りに助けられながら日々できることも増えている。
自分の気持ちに素直になって、心ひかれるものに全力で取り組むこと。それがきっと僕にとって最善の道だったのかもしれない。この学生生活最後のチャンスは、きっと神様からのご褒美なのだろう。本番は来月。険しくてワクワクするこの道の先に立つ自分は、いったいどんな顔をして待っているのか。今から楽しみだ。【成城大・風間健】