内々定・内定事情アンケート 囲い込み、オワハラも経験
経団連加盟企業で1日、内定が解禁され、多くの企業で内定式が行われた。しかし、早くから内定を約束する「内々定」や内定をもらっていた学生も多い。キャンパるでは、2020年春卒業予定の就活生64人に緊急アンケートを行い、内々定・内定事情を聞いた。(カッコ内は大学名・性別)【一橋大・川平朋花】
アンケートによると、選考を受けた企業数の平均は「14・2社」。18年5月に行ったキャンパるの調査では平均「17社」だったことを考えると、企業を絞って受ける人が増えたようだ。「多くエントリーしたからといって受かるわけではない」(上智・女)という意見はもっともだ。
企業数を絞った就職活動ができるということは、「売り手市場」だからか。内々定(または内定)数を見ると平均2・3社。たしかに就活生側に選択権が与えられているように見える。とはいえ最も多い回答は「1社」(全体の36%)。多くの内々定を持つ人の回答が平均企業数を引き上げたようだ。
また、手にしている内々定の「重さ」は学生によって異なる。「納得のいく就活ができなかった」(上智・男)と辞退し、21年卒としての就活を選ぶ人もいた。記者も20年卒予定就活生だが、重要なのは内々定数の多さではなく、志望企業に行けるかどうかだと感じる。
そんな就活生を前に、企業は少しでも自社に魅力を感じてもらいたいところ。内々定後には、しばしば社員を交えた食事会や職場見学などが用意される。エンタメ系企業内定者からは「手がけている公演を見た」(早稲田・女)という、うらやましい体験談も。
他社辞退と引き換え/選考解禁日に拘束
ただ、中には強硬手段で「囲い込む」企業もある。たとえば「内々定と引き換えに、他社の選考辞退を求められた」(昭和女子・女)というケース。これは「就活終われハラスメント(オワハラ)」と呼ばれるものだ。「6月1日拘束。行けば内々定がもらえる」(早稲田・男)という場合も。選考活動解禁日の6月1日を押さえ、就活生が他社の選考に行くことを阻止する作戦だ。
リクナビ問題、学生は不信感
膨大な時間とコストをかけた分、内々定辞退を減らしたい。そんな企業側の思いは、リクナビ問題にもつながっているのではないか。アンケートでは「(リクナビは)就活生の味方ではないんだなと思った」(青山学院・女)、「データを買った企業が採用に使用していないといっていたが信用できない」(日本・男)などと、リクナビや購入企業に対する不信感が見られた。
とはいえ、採用側と就活生の関係は必ずしも殺伐としているわけではない。「予約し忘れた面接を受けさせてもらえないかお願いしたところ、快諾してもらえた」(国際教養・男)など、志望企業に救われた経験も寄せられた。
さまざまな企業や人と出合うのもまた縁だ。新卒入社先でなくとも、消費者として、取引先として、転職先として、また出合うかもしれない。お互いに誠意ある対応を心掛けたいものだ。
■リクナビ問題
毎年約80万人が登録する就活情報サイト「リクナビ」が内定辞退率予測を企業に販売していた問題。約7万5000人が対象となった。うち約8000人については、政府の個人情報保護委員会から個人情報保護法違反と認定され、リクナビを運営するリクルートキャリアは是正勧告を受けた。
■経団連の「採用選考に関する指針」
指針では、2020年卒予定の就活生について、広報活動の開始を3月1日以降、選考活動開始は6月1日以降、10月1日以降を内定解禁と規定。しかし罰則はなく、多くの会員企業でインターンシップなどを通じた早期選考が行われている。なお21年春卒業予定者(主に現3年生)以降は策定しない方針。政府は同年以降も、現行日程の維持を経済・業界団体に要請している。