太平洋戦争 学ぶ場設け風化防ぐ
1945(昭和20)年のきょう6日、広島に原爆が投下され、そして15日に終戦を迎えた。あれから74年。時代は、昭和、平成を経て令和に変わった。年々、語り部の高齢化により、直接戦争体験を聞ける機会は減りつつある。今年もキャンパる編集部は3回にわたり、「戦争を考える」企画をお送りする。
元号が令和に変わり、初めての夏。昭和に起こった戦争がさらに遠のいたように感じる人も少なくないだろう。今回取材班では、太平洋戦争(1941~45年)について大学生264人にアンケートを行い、今の考えや思いを探った。(丸数字は学年)
近年、歴史的な日を知らない若者が増えているそうだ。そこで「8月6日」と「8月15日」を代表させ、何が起こった日か聞いてみた。正解したのは約7割。残り3割は「わからない」「山の日」など、正しく回答できなかった。言うまでもないが、6日は広島原爆投下の日、15日は終戦記念日だ。
次に、これまでどのようにして「戦争」に触れてきたのか尋ねた。多かったのは授業や修学旅行。「ドキュメンタリー映像を見た」(崇城(4))、「広島を舞台にした劇に出演した」(津田塾(3))など、学校以外での活動も並ぶ。
「印象的」との感想が目立ったのは戦争経験者による語りだ。約半分の人が、実際に話を聞いたことがあると答えた。「もう少し終戦が遅ければ、祖父は特攻隊員として出撃していた」(早稲田(2))など、祖父母が経験者だという人も。機会があれば、身近な人に戦争体験を聞いておきたい。
時がたつにつれ経験者は減少していく。この現実について、約7割の人は危機感があると回答。「本当のつらさを伝えられるのは体験した人だけだと思うから」(東京女子(2))など、リアリティーが失われることを懸念する声があがった。「徐々に事実とずれてきそうだから」(桜美林(4))といった、伝承することで生じる課題に目を向けている人も。
一方、危機感がないと答えた人は、「これまでに語り継がれたことが残っているから」(千葉(1))という理由がほとんど。また、「経験者が減るのは戦争がなくなったということ。本来いいことだと思うから」(一橋(4))という考えもあった。
では今後、どう戦争を伝えていけばいいのだろうか。語りを記録する工夫としては、「文書ではなく、映像や音声で残す」(信州(1))との意見が多数。また、「VR(バーチャルリアリティー)を使って戦争体験をする」(早稲田(4))、「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用する」(昭和女子(2))といった、現代ならではの案も挙げられた。
私たちは歴史の授業などで戦争について触れているはずだ。しかし、「習った内容は忘れた」(関東学院(3))のように、記憶に残らないこともある。そこで、今行われている学校での平和学習について考えを聞いた。
ほとんどの人が、今まで通り、またはそれ以上に、「学ぶ場を設けることは必要」と回答。しかし、「怖さだけでなく、戦争勃発の原因について学ぶべきだ」(京都(3))、「被害者であるという側面が強調されすぎている。もっと中立的な立場から教えたほうがいい」(筑波(3))などの提案もあった。
また、「授業では壮絶な話が少ない。一人一人に人生があったということを知るのが重要だと思う」(上智(2))といった、取り扱う内容について指摘する人もいた。ただし、「小学生のときに原爆を描いた絵を見てトラウマになった」(青山学院(1))などショックを抱えきれない人も少なくない。どこまで踏み込むべきか、慎重に考える必要がある。
最後に、これまで平和学習をしてきて感じたことを聞いた。「自分の住んでいる日本で、ほんの少し前まで戦争があったのだと身にしみた」(酪農学園(2))、「戦争の生々しさに心を痛めると同時に、記憶を残そうとしていることに希望を感じた」(東京(3))などの感想が目立ち、真剣に受け止めている若者が多い印象を取材班は受けた。
時が過ぎ去り、戦争の記憶が薄れていくことは止められないが、風化を防ぐことはきっとできる。私たちも次の世代へ伝えられるよう、学んだことを心に留めておく必要があると感じた。