未来のために
「あんたってすぐ将来の夢が変わるよね」。母から日常的に言われる言葉。そんなことない、と言い返したくても言い返せない。今までいくつ将来の夢があったか、はっきり覚えていないのだ。やりたいことがくるくる変わるから、と言い訳をして何もせず過ぎる日々。見えない将来に焦っていた。
そんなとき舞い込んできたある知らせ。幼稚園から続く仲である2人の友人に内定が出たのだ。1人は美容師、もう1人はホテルマンに。2人は2年間の専門学校を卒業し、就職することになった。
大事な友人の進路が決まったことはとてもうれしい。その半面、プレッシャーでもあった。幼い頃から変わらぬ夢を追い続け、かなえた友人たち。対して大きな目標もない自分。自分にないものを持っていることがうらやましかった。
そんな友人たちと先月久々に会った。4月からの社会人生活を語る姿は、同い年でもずっと大人に見えた。やっぱり自分とは違うなあ。そう思っていたが、気づかされた。「不安だけど精いっぱいやってみるよ」。幼なじみは2年間学校で努力を重ねてきた。その自信があるからこその言葉なのだろう。反対に自分は夢のために挑戦してこなかった。でも、2人の誇らしげな目にはっとした。うらやましかったのは夢を持つことではない。目標に向かう熱意だと。
なりたいもの、やりたいことはまだわからない。でも今は目の前のことに全力で取り組もう。2人がそう示してくれたから。【学習院女子大・渡口茉弥】