読見しました。:旅先で

小銭を乗せたてのひらの絵

 「コインの種類が分からない……」

 早朝のコンビニで私は焦っていた。自動販売機の支払いでさえクレジットカードのみの米国で、滞在中は現金を使う機会なんてほとんどない。だから硬貨の種類を覚えることもしなかった。コインは換金できないから、帰国するまでに使い切りたい。そのためにお菓子を買おうとコンビニに来たのに。

 日本の会計ですら小銭を出す際に焦ってしまうのに、さらに見分けがつかないコインで支払うなんて私にはハードルが高すぎた。

 英語も満足に話せないので店員さんに聞くこともできない。半ばやけくそで持っているコインを全部手のひらに出して確認しようとしたその時、横から急に5枚のコインが降ってきた。なんと隣のレジでたばこを買いに来たお兄さんが私を見て、足りない5セントを補ってくれたのだ。どうやら8セント必要であったのに、私は3セントしか持っていなかったらしい。下手くそな発音の「サンキュー」はちゃんと届いたか不安だが、お兄さんの笑顔にとても心が温かくなった。

 私も受け取った優しさをつないで、いつか今度はあのお兄さんのように、その優しさを誰かにお返しできたらいいと思う。【学習院女子大・田中美有、イラストは立教大・明石理英子】

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