今年の夏休み。幼稚園時代の担任の先生とお会いした。被爆者の声を届ける活動に参加していることを聞き、会いたい、と思ったからだ。卒園して以来15年ぶりにお会いして、近況を伺うなかで驚かされたのは、彼女の経歴だった。
18歳で地元の農協に就職。配属された有線放送部門でアナウンサーとして農協からのお知らせを伝えた。しかし、幼稚園の先生になりたいという夢をかなえるため、27歳で短大への進学を決意。卒業後は幼稚園の先生として15年ほど勤務した。その後「人格が形成される前の子どもたちと接する仕事がしたい」と思うようになり、0~2歳児が通うこども園で働くことを選んだ。Advertisement
そして60歳になった3年前、今度は小中学生の成長を支援したいという別の夢ができた。選んだのはさまざまな困難を抱えた子どもが集う放課後等デイサービスでの勤務。負担は大きいが、「やりがいがあって楽しい」と話したのが印象的だった。
「ゼロからのスタート」を何度も重ねた先生の転職経験。驚くばかりの私に、先生はこう言った。「どの仕事も無駄ではなかった。例えばアナウンサーの仕事をしていたことがきっかけで、結婚式の司会のアルバイトをして、短大の学費を払うことができた」
人生100年時代というが、本当にそうなら私の人生はあと80年。まだまだ始まったばかりだ。「何歳になっても、夢や目標をかなえるために奮闘したい」。先生との再会は、私をそんな気持ちにさせてくれた。【法政大・岩村凌】