災害級の猛暑に見舞われたこの夏。いまだ厳しい残暑が続く中、「キャンパる」には新たな仲間が加わり、これまで以上に活気にあふれている。学生記者としてさまざまな取材に挑戦する3人に「今、思うこと」を聞いてみた。【まとめ、法政大・園田恭佳】
人助けになる記事を
初めての献血は高校3年生の冬。祖父の葬儀の帰り道だった。なんとなく喪服のまま、家の近くで見かけた献血カーに乗り込んだ。祖父が輸血を受けていたことを思い出したからだ。Advertisement
当時は受験期で、あまり見舞いに行けなかった。その罪滅ぼしの意味もあったのかもしれない。看護師の方はとても優しく接してくれた。受験で誰とも話さず、机に向かうだけのロボットのような無機質な心が洗われるようだった。
献血を終えると、外の空気が新鮮に感じられた。誰かのためにできることをしたという思いが、私を包んでいた。喪服のまま満足そうに歩く私に、通りすがりの人々は不思議そうな目を向けてきたが、気にしなかった。「ありがとう」。そのひと言が、私の新たなエンジンになった。
先日10回目の献血を終え、記念品と賞状を受け取った。形となって感謝されるのは初めてのことで、あの時の満足感を思い出した。キャンパるの活動も、人助けになればいいなと思う。人のためになる情報を伝え、記事として形に残したい。【法政大・今井勇登】
己の偏見と向き合う
「What’s Going On」。R&Bミュージックのレジェンドであるマービン・ゲイが歌った反戦歌である。高校生の時に知ったこの歌で特に好きなのは「僕を罰しないで 乱暴なやり方で 話してくれ そうすればわかる 何が起きているのか」という一節だ。暴力ではなく、対話を呼びかけるメッセージにひかれた。
同じ頃、米国で黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官の暴行で死亡する事件が起きた。そして事件を契機に、黒人に対する暴力や差別に抗議する運動が急速に盛り上がった。差別や偏見は、突き詰めると国や人種に対する偏ったイメージで個人を捉えるという問題があると感じる。そして、差別する側はそうするのが当然であるかのように考えている節がある。
ゲイが訴えるように、相手を理解しようとする対話とその積み重ねが必要だと思う。その中で自分の当たり前が他者にとっては全く違うことに気が付く。私たちは対話によって「何が起きているのか」を知ることができる。自分の内面にある偏見と向き合いながら、それをより多くの人に伝えたい。【明治大・山本遼】
大人になり思うこと
成人式も済ませ、完全に「大人」の仲間入りをした私だが、正直に言うと全く実感がない。というのは小学生の時、大人になるとこれまで分からなかったことが急に分かるようになり、怖いものが何もなくなると思っていたからだ。
幼い頃、実家の商売の関係で酔って大騒ぎをする大人を間近で見て育ち、「大人は先生やお母さんに怒られることもないし、怖いものなんてないのだろうなあ」と本気で思っていた。また、難しい質問にも自信満々に答えてくれる姿を見て、尊敬の気持ちを抱いていた。
ところが今思うのは、大人になったからといって、分からなかったことが急に分かるようにはならないということ。偉い存在だったはずの大人が、今の自分とそう変わらないことが分かった。むしろ大人になると、周りからの評価や自分の将来への不安など、子どもの頃よりも怖いものは増えることにも気付いた。
現在、大学3年生。「社会人」に似たような気持ちを抱いている。この気持ちも実際に社会に出たら変わるのだろうか。楽しみである。【明治大・米林爽永】