「市民の漠然とした不安感。これが一番危険なんです」
大学1年の時、憲法の講義で聞いた言葉が、今になって身に染みて感じられる。このモヤモヤとした感情は、私の判断を鈍らせ、行動をも操ってしまうと経験をもって知ったからだ。
まさか、と思えるようなことが今、私の目の前で、そして世界中で起こっている。そのせいか、気づけばSNSでの最新情報を頼りにしている自分がいた。そして、先日は友人から回ってきた「今夜にもロックダウン(都市封鎖)発表」のデマメールも、あっさりと信じてしまった。普段なら簡単にデマだと気づけたのに、不安な気持ちにつけこんでくるような内容を、疑うことはなかったのだ。
そんな不安の渦中にいると、何気ない日常というものが最高の幸せなのだと気づかされる。家族と外出できること、友人と授業を受けられること、そんな当たり前だと思っていたことにこそ、私は感謝しなければならない。
桜が咲き、散りゆく姿を遠巻きに眺めた、初めての春。どんなに忙しくても、必ず年に一度は家族で花見に出かけていた。だが、命より大切なものはない。現状を悲観し、あらゆる情報をあさるのではなく、適度な危機感を持ち、とるべき行動を一度立ち止まって考えてみることが大切ではないか。私もできることから実践していくつもりだ。
私の地元、静岡は本格的な新茶シーズンを迎える。今はただ、平穏な日々がいとおしい。【早稲田大学・杉本汐音】