「オケ(オーケストラ)が人生を決めてくれるわけじゃないんだから」。就職活動の相談をしていた先輩に、今は就活を頑張るように励まされた。私だってそう思っていた。つい半年前までは。
私は上智大学管弦楽団に所属してバイオリンを演奏している。10年に1度、ベートーベンの第九(合唱付き)を演奏する機会があり、今年がまさにその年だ。12月の演奏会に向けて、一段と気合を入れて練習に取り組んでいる。
当初私は、今秋は就職活動を優先したいという思いがあった。就活で欠席が多いことに引け目を感じつつ、「半年後の第九より、今後40年の社会人生活が大事」と言い聞かせていた。
ところが夏休み、オケの1週間の山中湖合宿と、絶対に行きたい会社のインターンが重なった。でも、合宿はコンパなどもあり、最高に楽しい行事。合宿を休むのは嫌だ。そこで、まず合宿に行き、東京に戻って2日間就活し、また合宿に戻るという怒濤(どとう)の計画を立てて実行した。
インターンは刺激的で、ずっと抱いていた将来像に一歩近づけた気がした。でも時々、仲間の顔が頭をよぎる。はやく戻らなきゃ。オケはいつの間にか、楽しみで、息抜きで、大変なことも忘れられるかけがえのない時間になっていた。
演奏会はもうすぐだ。今の私は就活がオケの練習と重なっても、練習参加を諦めたりしない。コロナ禍に高校生活を送った私にとって、痛いほどわかっている。就活はやり直せても、青春はやり直せないのだから。【上智大・佐藤香奈】
