学生注目! 在学中に出産、どう思う? 「産んでよかった」私の選択 20歳 休学し子育て 復学へ

学生注目

1人の女性が生涯で産む子どもの平均数を示す「合計特殊出生率」が2024年に1・15と過去最低を更新し、少子化と晩産化が一層加速する現代。そんな中、学生ながら出産と子育てをする若者もいる。休学して子育てする学生と大学の支援策を取材した。【上智大・佐藤香奈、石脇珠己】

学内託児所で安心の環境を
 東京都内に住む大学3年生の佐々木楓(かえで)さん(20)=仮名=は、今春から1年間休学して子育てに取り組んでいる。年上の夫で会社経営者の湊(みなと)さん=同、年齢非公表=は在宅で仕事をする日も多く、子育ては2人でしているという感覚が強い。

2人の出会いは、楓さんが湊さんの会社でインターンをしたことだ。昨年11月に結婚し、同月に妊娠が分かった。「とにかくうれしかった」と振り返る。家族でできるだけ長く過ごしたいと考え、「結婚したら、すぐに子どもがほしいと思っていた」という。今年6月に誕生した娘は「とにかく可愛い」。朝起きて、娘に「おはよう」と言いに行くのが日課だ。日中、夫婦が仕事や家事をするために、9月から娘を保育園に預けている。

 楓さんは学生出産について、「(夫が)24時間家にいることもでき、経済面でも頼りになる。そういった特別な環境だからこそ、学生での出産を選べた」と話す。楓さんの両親も出産を歓迎してくれ、不安はなかったという。

ただ、休学せずに出産をするのは無理だった。4週目からつわりが始まった。歩けない。立てない。湊さんが車で送迎して登校した日もあったが、単位取得を諦めた科目もある。授業を受けることはできても、テストを受けるのは難しかった。体調がすぐれない日は湊さんが看病や家事をしていたため、両親のサポートはあまり受けていない。低学年のうちに授業を多く履修していたので、休学に迷いはなかったという。

 入院先の病院で「私も若い時に産めばよかった」と若い楓さんを羨ましがる妊婦がいた。難産になるリスクも低く、体力的にも恵まれているからだ。ただし楓さん自身は「大学に入ったら就活して就職して、キャリアを積んだ後に出産するのが当然」と思ってきた。しかし「夫と出会って考え方が変わった」のだという。周囲と違う生き方も、自信を持って選んだ。「産んでよかったと思っている」と誇らしく語る。

楓さんは、交流サイト(SNS)で子育ての様子を発信している。学生で出産する自分を少数派だと考えていた楓さんに「同じ境遇の人や肯定的な人もいるから探してごらん」と湊さんが勧めたのがきっかけだ。

 当初は記録程度に投稿していたが、徐々に同世代からのメッセージが届くようになった。「同じ境遇なので友達になりたい」「若くして産みたいけれど、家族を説得できる自信がない」「パートナーに喜んでもらえなかった。中絶できる期限まで迫っているが、決めきれず後ろめたい」など。命の選択を迫られる相談に乗ったこともあった。「気持ちがわかる相談が多い」。楓さんは、それぞれの事情に寄り添い、夫にも相談しながら利用できる制度を紹介するなど、ベストな回答を模索している。「20歳、大学生、学生出産の自分だからこそ、頼っていただけることがうれしい」と自信につながった。

来年4月に復学をする。就職活動はせず、卒業後は夫の会社を手伝う予定だ。SNSでは「就職をしないなら大学に行く意味がないのでは」という批判もあった。退学をすれば確かに子育ては楽だったかもしれない。それでも「大学での学びを仕事に生かしたい。また娘のためにも大学を卒業しておきたい」と思った。

 ただ、復学にあたって不安な点もある。育児が夫任せになってしまうことだ。夫に在宅で仕事をしてもらい、娘の面倒を見てもらおうと考えているが、大学では、保育園が休みの祝日にも授業が入ることがある。

 学生や教職員向けに託児所を設置している大学は、女子大学、国立大学に多い。男女共学の私立大では、上智大学が2008年から託児所を設置している。上智大学学生センター長の永野仁美教授によると、設置のきっかけは、在学生で出産した人がいたことを機に、当時の理事が働きかけたことだという。教職員、学生ともに利用でき、授業時間中の保育を想定。大学から金銭補助を受け、授業のある午前9時から午後7時は、1時間あたり800円と手軽な値段で利用できる。定員は5人。現在の利用者は、学生が1日平均1~2人、教職員も同じく1~2人程度だという。

 こうした支援に力を入れる一方で、大学側には学生の出産を把握できないという課題がある。永野教授によれば、学生の出産は、休学の申請など学生の申し出がなければ判明しない。そのため上智大学では、相談できる窓口を設けるなど支援が届くように努めているという。

 子育てと学業の両立に悩んでいる人にとって、大学に託児所があることは安心材料になる。永野教授は、「産む選択をした人が、安心して学業も続けられる環境を、大学として提供し続けていきたい」と語った。

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