「いらっしゃいませ」。大学1年生だった2年前、最寄り駅のスーパーでアルバイトをしていた。レジ打ち、品出し、商品確認。淡々とこなす日々の業務は、どこか面白みに欠けていた。
レジ打ち担当になると、手が空いた時に近くの棚の商品をきれいに並べ直す暗黙のルールがあった。見た目がきれいならいいだろう。初めのうちはそんな気持ちで、先頭に来る商品だけきれいに並べ直していた。作業を終えると一見とてもきれいに見える。しかし奥はぐちゃぐちゃのまま。それでいいと思っていた。
ある日、全然うまくきれいに立ってくれない商品があった。奥を見るとやはりぐちゃぐちゃ。それでも見ないふりをして、手前の数個だけを並べ直そうとした。しかしどれだけ頑張ってもダメで、私は諦めて奥にある商品もすべて取り出し、土台から並べ直した。すると不思議なことに、いや、当たり前かもしれないが、すんなりきれいに並んだ。そして心なしか、いつもよりもきれいに見えた。
年が明けてから本格化した就職活動での面接や、初対面の人との自己紹介。見かけだけでもきれいに見せたくなること、見せなくてはいけないと気負うような場面がたくさんある。しかし土台がしっかりしていないと、単なる背伸びであることは簡単に見破られてしまうんだろうなと、スーパーでの出来事を思い出しながらそう思った。等身大の自分を見つめ、しっかりとした土台を築きたい。見かけだけじゃない、真の美しさと強さを持つために。【立教大・宇野美咲】