すたこら 「頑張ろう」

すた・こら

 いつからだろう。気づいた時には、「頑張ろう」という言葉が口癖になっていた。元々は、大切な試験や大会といった大きなイベントを前にした時に、この言葉を口にすることが多かった。自分を奮い立たせるためだ。だが次第に、ちょっと気合を入れたい時や気持ちを切り替えたい時にも、気軽に使うようになった。

 そんなある日、就職活動が行き詰まっていた時のこと。お互いの選考状況について友人と話していた時に、私の口からこの言葉がぽろっと出た。すると、友人から「いつも『頑張ろう』って言ってるけれど、十分頑張ってるじゃん。そんなに意気込まなくて大丈夫だよ」と慰められてしまった。

 友人には、切羽詰まった私が自分を追い込んでいるように見えたのだろう。不安で曇っていく心の中を一新しようと、ただ何となくつぶやいただけだったのに。友人に無駄に気を使わせてしまい、申し訳なさと後ろめたさを感じる。

 それ以来、「頑張ろう」の自粛を試みてみたが、つぶやいた後で「また言っちゃった」と気づく繰り返し。落ち込んだ時や、やる気の出ない時。ネガティブな気持ちを感知すると、ついこの言葉が出てしまうのだ。きっと私にとって「頑張ろう」という言葉は、後ろ向きだった気持ちを少しだけでも持ち上げ、前を向かせてくれるスイッチなのだろう。

 だから今夜もつぶやこう。「頑張ろう」と。提出期限が迫っているにもかかわらず、いっこうに進まない卒業論文と向き合いながら。【立教大・明石理英子】

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