読見しました もう一つの名前

すた・こら

 今年の初め、私は自分のもう一つの名前を知った。カタカナで書くと「ヘインソー」という、ミドルネームがあったのだ。なぜその名前があるのか。それは私が、ミャンマー生まれの父と、日本生まれの母の間に生まれたハーフだからだ。

 幼い頃こそ引け目に感じていたが、私は今、ハーフであることに誇りを持っている。しかし、唯一気になっていたことがあった。それは、父の母国とのつながりを示すミドルネームがないということ。私はこれまで、自分と同じく外国生まれの親を持つ多くの方々に出会ったが、彼らはミドルネームを持っていた。私はそんな彼らをうらやましく思っていた。

 自分にはなぜミドルネームがないのか父に尋ねてみた。すると思いがけないことに「あるよ」と言う。今まで教えてくれなかった理由も分かった。「日本で生活する分には、日本名だけで十分でしょ」と母は言う。日本で暮らす私に、ハーフというレッテルを貼らない配慮だったのだ。

 「ヘインソー」は、ミャンマー語で「皆の上に立ち、導いていく」という意味だという。名付けてくれたのは父方の祖母だ。ミドルネームを知って、ミャンマーを思う気持ちは一段と強まった。祖母の思いが私に届いた気がしたからだ。今度は私がミャンマーの祖母に思いを届けたい。【大正大・中村勝輝、イラストも】

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