ここからfrom現場 ウクライナ難民支援の募金を実施、筑波大「国際交流サークルCASA」

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異文化尊重、地域巻き込む

 ロシアがウクライナへの侵攻を開始して3カ月近く経過した。ウクライナ国外に脱出した難民は600万人を超え、苦境に置かれた難民を支援しようという取り組みが、日本を含めて世界的に広がりを見せている。国内の若い世代は、どんな思いで支援活動に取り組んでいるのか。ウクライナ難民支援の募金を実施した、筑波大学の公認団体「国際交流サークルCASA」への密着取材を行った。【中央大・朴泰佑、写真は上智大・沖秀都】

 「ウクライナ難民へのご支援を、お願いいたします」。人々が家路に就こうと先を急ぐ茨城県つくば市のつくば駅。改札の隣で、その声は構内に響いていた。4月19日。春にしては少し肌寒い夕方、駅にはCASAのメンバーら6人が集合。「人道支援金寄付のご協力お願いします」と書かれた手作りのメッセージボードを手に、マスク姿の彼らは呼びかけを続けていた。

飲食店も協力

 募金に協力してくれた人々はそれぞれに「頑張ってください」「応援しています」と激励の言葉をかけ、CASAのメンバーらも「ありがとうございます」と声をそろえ、応じていた。「ロシアとウクライナの対立は根深い問題だが、家を追われ、生活が困難になった難民の方々を救いたいという純粋な気持ちで募金を計画した」。そう語るのは、今回の募金活動の責任者を務める同大情報学群の鄭晟徹(チョンソンチョル)さん(20)だ。CASAとして初の試みだった今回の募金活動。同駅で同13~19日の1週間、毎日3時間行った。また街頭だけではなく、同大周辺の飲食店にも協力を呼びかけ、募金箱を設置する活動も同時に行った。

 普段のCASAの主な活動内容は、異文化交流だ。40人の会員のうち18人が海外からの留学生で、そのルーツは米国や日本、台湾、韓国など多岐にわたる。19日の募金活動にも3人の留学生が参加していた。普段は、互いの出身国の文化について話し合ったり、各国の伝統料理を食べたりと、サークル内で交流を行っている。異文化の尊重をモットーに行動してきたCASAだからこそ、軍事力で母国を追われたウクライナ難民の問題から、目を背けられなかったという。

誰かがやらなくては

 「最初は変な目で見られないか怖かったが、誰かがやらなくてはならない」。そう英語で決意を語ってくれたのは、米国からの留学生で、同大地球規模課題学位プログラムに通うレイチェルさん(20)だ。「日本語は得意ではないが、ウクライナの惨状に対して何かしたい」という思いのもと、募金活動に加わったという。

 募金に応じる人の思いもさまざまだ。帰宅途中の男子高校生(17)は「戦争が起きたことが悲しかったから」と、寄付した動機を率直に語ってくれた。動画配信サイトでウクライナの現状を知り、何か自分でも支援ができる場がないか探していたという。また「募金に取り組む若い彼らを手本に、つくばの地域が一丸となってウクライナへの支援を行ってほしい」とエールを送る20代の女性看護師もいた。

 ただ今回の軍事侵攻やその要因を巡っては、立場によって多様な意見があるのも事実だ。鄭さんによると、実際に募金活動中のメンバーに直接、異論を唱えてくる人もいたという。CASA代表で、レイチェルさんと同じプログラムに在籍する米国籍の留学生、青山翔龍さん(20)は、その時の状況について「正直、ちょっと怖かった」と話してくれた。しかしCASAはひるまない。「どっちが正義でどっちが悪かと決めつけずに、多様な意見を尊重しながら、人道支援に徹した活動をしたい」。鄭さんは、団体としての立場と決意を明確に語った。

40万円を寄付

 1週間の駅前募金活動で集まったお金は総額約40万円。募金に応じてくれた人数は累計で573人に上った。同大周辺で設置した募金箱の寄付金を合わせ、合計約41万円を、今月6日に全て国連UNHCR協会に寄付したという。主に、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が主導して行う水・毛布などの緊急支援物資の提供、子どもの保護などさまざまな難民援助活動に使われる予定だ。

 今回の募金活動の成果について、青山さんは「留学生と日本人学生の合同メンバーで協力してやり終えることができ、強い達成感がある。今後も、留学生と日本人学生の間の心の壁をなくす取り組みを進めていきたい」と語った。

 大学内はもちろん、地域を巻き込む彼らの行動力や熱意に、記者は大きな可能性を感じた。「CASAが、世界レベルの問題解決に貢献できる人材を育成できたらいいと思う」と話した青山さんの言葉が、強く印象に残る。彼らのような努力を積み重ねることで、多様な人々が互いを尊重し、共生できる社会を実現できるのだろうと思った。

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