私が高校まで通っていた学校は、小中高の一貫校だった。人数も学年で32人しかおらず、幼い頃から何をするにもみんな一緒。12年間、人生の半分以上の時間を共に過ごした仲間たちであり、私にとってはかけがえのない存在だ。
そして去年の春。高校を卒業し、その仲間たちと離れ離れになる時がきた。互いに抱き合い、泣きながら別れを惜しむ仲間たち。しかし、私は「別れ」が実感できなかった。そのせいか、不思議と涙が出なかったのは、今でも覚えている。あれからまもなく1年。大学生活にも慣れてきて、多くの新しい友人にも恵まれ、それなりに楽しい日々を送っている。
そんな中、ふと彼ら彼女らの姿を思い出す時がある。大学で授業を受ける時、食事をする時、眠りに就こうとする時。みんなと過ごした何気ない日常が、前触れもなく脳裏に浮かぶのだ。別に疎遠になったわけでも、連絡を取っていないわけでもない。むしろ、定期的に誰かしらと会っているぐらいだ。それなのに、一人になると思い出す。どこか恋しくて懐かしい、もう戻ることのできないあの頃を。
もうじき、春がやってくる。みんなと過ごした春には戻れないが、みんなと過ごせない春がきても、いつかは思い出すことになるのだろうか。「戻れないあの頃」として。【中央大・朴泰佑、イラストは東洋大・荻野しずく】