学生記者座談会 コロナ下の衆院選 若者の政治や投票への意識は?

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 10月31日に投開票された衆院選は、新型コロナウイルスの世界的流行下で行われた初の全国規模の国政選挙でもあった。ただ若者の関心は高くはなく、総務省の抽出調査で19歳の投票率は35%と、全体の投票率を約21ポイントも下回った。コロナ禍は若者の政治意識にどう影響したのか。キャンパる編集部の学生記者5人に話し合ってもらった。【司会・まとめ、日本女子大・安藤紗羽】

SNS呼びかけ効果疑問

 ――今回の選挙では、SNS(ネット交流サービス)上で若者に人気の俳優など著名人による投票呼びかけや政治団体による啓発が活発でした。実際に効果はあったと思いますか?

 C 実際の投票率を見ると効果があったとは思えない。一番話題になった、俳優や音楽家などでつくる「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」の動画再生回数は69万回。1日で再生100万回を超える動画クリエーターもいる中で、あれほどの有名人が集まってこの数字はかなり少ないと思う。

 E 確かに選挙があることを知るにはいいかもしれないけど、実際投票に行くかどうかは別のこと。

 D 「目に留まればラッキー」程度の活動だと思う。無関心な人には不向きだったのでは。

 B インスタグラムで好きな声優が投票に行ったという投稿をしていたのを目にした。興味を持つきっかけにはいいのかも。

 ――こうした動きを踏まえて、若者の投票率を上げるにはどのような工夫が必要だと思いましたか?

 B SNSに限らず、情報を得られる媒体を幅広くすればいいと思った。嫌でも目に入るような、動画配信サイトでの広告とか。

 C 事情があって住民票が地元にあるため不在者投票を利用したが、手続きがかなり面倒だった。大学は東京だが、よく行き来する地元の候補者に投票したい気持ちは強い。申請だけでもネットでできると楽なのだが。

 B 私も住民票が地元にあるから今回の選挙には行けなかった。就職活動中で忙しく、手間がかかる不在者投票には時間が割けなかった。

 E もっと選挙をイベント化していいのではないか。今回はハロウィーンと重なっていたのだし、何か工夫があったら若者はもっと選挙に興味を持ったかも。

小さな変化も伝えて

 ――今回も自民党が過半数を取りました。選挙結果についてどう思いますか?

 A 結果は最近の国政選挙とあまり変わっていないけれど、直前の自民党総裁選では女性候補者が過去最多になるなど政治全般では良い方向に向かっている部分もあると思う。

 E ジェンダー問題やマイノリティーに関する政策も注目されたけど、結局は自分の生活に関わる部分に関心が集まるなと感じた。

 B 大きく結果は変わらなくても、小さなことでもいいから選挙によって起こった変化をメディアなどで示してほしい。どうせ変わらないと思うから選挙に行かなくなる。

 A そうした情報は必要だと思う。私は横浜市在住だが、この間の市長選で政治は選挙で動かせることを体験した。自分たちの票で結果を動かせるということを知るのは大事だ。

 ――コロナ下での国政の動きや政策を踏まえて、政治に求めることに変化はありましたか?

 C 学校封鎖で大学に通えない状態なのに、GoToトラベルの政策が始まった時は納得できなかった。若い世代の声は政治に反映されにくいことを直接的に感じた。

 D 政治全般に数値的な基準や根拠、明確な目的を求めるようになった。

 A あまり変化はなかったけれど、政治の影響をダイレクトに受けた1年であったからこそ、国にしかできないことをしてほしいと強く求めるようになった。

 E 政治には説得力が必要だと思うようになった。緊急事態宣言下でのオリンピック開催など、国民に協力を求めるなら政策に説得力を持たせなければいけないと感じた。

緊張感持たせるために

 ――コロナ下で政治に求めるようになったことは投票行動に影響しましたか?

 B コロナで苦労したことがあったからこそ税金やガソリン代など自分の生活に大きく関わる部分で重要視することが増えた。

 E コロナ対策や経済対策はもちろん重視した。時期的に、ワクチンを2回接種した後で感染が下火になっていたことからコロナ後の政策を立てている候補者を見て投票した。

 C コロナ対応の与党の政策を見て政治を任せられないと感じた。特別支持していないが、批判票という意味で野党に投票した。

 A 大きな変化はなかったが、政策の実現性で与党が有利になってしまうのは良くないと思う。政権交代への緊張感を持たせるためにも選挙は行くべきだ。

 ――2019年の参院選で投票した人に質問です。コロナ禍を踏まえて投票先を変えたりしましたか?

 A 実際に投票先を変えることはなかったが、投票先を選ぶときに他の国の首相や政策と比べる時があった。全世界が同じ問題に直面している時に、各国首脳の発言を聞いているとなおさら、国民への説明責任を果たしてくれる政治家を求めるようになった。

 ――ありがとうございました。

 <参加学生のプロフィル>

A=法学系・女子23歳

B=語学系・女子21歳

C=法学系・男子21歳

D=経済学系・女子21歳

E=経済学系・男子22歳

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