私の老後に対する考えは、祖母の介護を経験し始めたことを機に変化した。年のせいで寝たきりになった祖母の家までは車で1時間。以前は半年に1回だったが、今は家族で毎月赴く。食料の買いだめ、布団干しと洗濯、掃除を手分けして行う。急な生活の変化に、半年が過ぎても驚きともやもやが続いている。
医学の進歩で寿命が延びた現代はよく「人生100年の時代」と言われる。それが正しいなら、やりたいことをやり続けて、きっと最後の20年はパラダイスだろうと想像していた。というのは、日ごろ私は将来を計画的に考えるたちで、「死ぬまでにやりたいこと」をリストにして書き留めているほどだからだ。やりたいことが多すぎて、計画しないと一生かけてもやりきれないに違いない――。
しかし祖母の姿から、最後の20年は、寝たきり状態で過ごすかもしれないことに気づいてハッとした。祖母を反面教師にしたいわけではない。だが、歩いてどこにでも出かけ、素敵な手芸作品もくれた祖母が身動きすらできなくなっている姿は、いまだに受け入れがたい。
数十年後の福祉は技術が進歩し、人力は今ほど不要だろうが、孫に身の回りのケアはさせたくない。誰にも頼らず生きていけるとは思わないが、何でも自分でやりたい私は、リストに老いへの備えを新たに追加しよう。そして「孫としたいこと」も今から考えて遊ぶ準備をしようかな。明香里おばあちゃんを世話した思い出よりも、明るくて楽しい思い出を残したいと思う。【千葉大・谷口明香里】