すたこら うまくいかなくても

すた・こら

 高校時代、失敗や後悔をすることにおびえていた。中学時代までは自分が理想とする道をそれなりに歩めていた気がする。ずっと志望してきた高校に合格するという、人生で一番の成功体験も得ることができた。だからこそ、理想に近づけた自分を、自分の失敗によって壊してしまうことが怖くなった。

 「高校生活も大学受験も、後悔しないよう頑張ろう」。そう心に決めて入学したものの、実際には後悔ばかりの高校時代だった。部活も学業も「完璧」を目指してきたが、両立できたとはいえない。理想像を追い求めるあまり、必死に頑張っても空回りして精神的にも肉体的にも疲れてしまうことが多かった。

 結果的に、浪人もしたしその成果も不十分だった。しかし不思議なことに、失敗の限りを尽くした今、意外と幸せだ。どんなにうまくいかなくても、やれる限りのことはしてきたため、思いのほか心残りもない。「理想的な自分を守り続けなくては」という変なプレッシャーから解放され、純粋に「目標を達成したい」という気持ちだけで頑張れるようになった。そして、失敗を恐れなくなったことでうまくいくことも増え、失われていた自信も少しずつ戻ってきた。

 失敗を美化するつもりはないし、避けられるなら避けたい。だが、皮肉なことに、失敗したことで成功につながっている部分もある。完璧主義の私だが、経験を積み、「失敗は悪いことばかりじゃない」なんて思えるようになって、少し心が軽くなった。【立教大・明石理英子】

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