新型コロナウイルスの猛威がやまず、感染終息が見通せない日々が続いている。不要不急の移動自粛が求められる中、ふるさとを離れて学校に通う若者の帰省事情はどうなっているのか。親元を離れて暮らす大学生・大学院生にアンケートしたところ、コロナ以前とは異なる配慮や気苦労を強いられている姿が浮き彫りになった。
アンケートには39人が回答した(カッコ内は、現住所→帰省先、学年)。まず、コロナ感染が拡大した昨年以降、1回でも帰省したかどうか尋ねたところ、8割を超える32人が「帰省した」と答えた。中には、大学が全面オンライン授業になったことを理由に「昨年度1年間、帰郷したままだった」(東京→鳥取、3年)という人もいた。
帰省の際に気を付けたことを聞くと、「PCR検査を受けたうえで、帰省してからも1週間の自主隔離を行った」(東京→広島、3年)、「帰省してしばらくは食事の際の私語を慎み、家の中でもマスクを着用していた」(東京→鳥取、3年)など、しっかりとした感染対策を行ったという回答が目立った。一方、帰省先が首都圏の学生からは「(感染者が多い)帰省先から自宅へ戻るときの方が気を使う」(茨城→東京、4年)との回答があった。
帰省の際に家族や周りの人との関係で気になったことは何だろうか。回答で多かったのは、「地元の友達と会うことに多少の抵抗があった」(北海道→神奈川、2年)という声。また、感染のリスクを考えて「ほとんど家族としか会わなかった」(茨城→愛媛、4年)という回答もあった。感染対策をしっかり行ったうえでの帰省でも心配は尽きないようだ。
帰省手段でも「普段は電車だが、今回は車を使った」(石川→鳥取、3年)と、公共交通機関の利用を避けたという回答もあった。
一方、昨年来一回も帰省していないと答えた7人に理由を尋ねると、「家族への感染を避けるため」(東京→鳥取、3年)、また、帰省で自分が感染してしまうと大学で共に活動するメンバーに迷惑がかかることから「部活に影響が出ないよう、自制した」(茨城→群馬、1年)という、感染回避を最優先する回答が寄せられた。
一大帰省期である夏休みを前に、コロナワクチンの接種に積極的に取り組む大学が全国的に増えてきている。この動きをどう受け止めているか尋ねたところ、「ワクチン接種が済めば帰省が容易になる」(神奈川→鹿児島、3年)と歓迎する声がある一方、「ワクチン接種により感染しなくなるというわけではないため特に心境の変化はない」(東京→福井、2年)という回答もあった。
今回のアンケートで、コロナ下での帰省には以前のような気楽さはないと痛感した。しかし先の見えない状況で、学生一人一人が最善の策を考え行動していることはとても印象的だった。【東京女子大・津田萌子、イラストは東洋英和女学院大・柳明里】