読見しました 台風の日

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 いつか台風の影響で、各鉄道会社が計画運休をした日。私は自宅の最寄り駅までの最終電車に乗れず、終点の駅でタクシーを待つ行列の一員になった。あれだけ早く帰れとテレビで忠告されていたのに、大雨の中、傘も持たずにカバンで頭を隠し、突っ立っている自分に嫌気がさす。

 「カムイン?」。突然、後ろに並んでいたインド人らしきグループに声をかけられた。見れば3人の男性が狭そうに一つの傘に入っている。少し戸惑ったが、私も寒さに耐えきれずお言葉に甘えさせてもらった。皆、自分の肩を雨から全く守れておらずおかしい。

 「何歳? なにしているの?」。片言の日本語に、「学、生、だよ」とゆっくり伝える。訪日して数年たつそうだが、言葉の習得は今一歩のようだった。私も英語が話せないからお互い先生になればいいね、なんて片言の英語で言って盛り上がる。深夜、台風の中で見ず知らずの外国人とタクシーを待つ非日常感に心が高鳴っていた。はたから見れば、150センチほどしかない身長の私と、ガタイの良い異国の男性3人組が一つの傘にすがっているのは不思議な光景だろうが、それも気にならない。

 結局、名刺をもらい連絡先も交換し、仲良くタクシーをシェアして帰った。誰とだって友達になれる、なんてうぶな言葉が思い浮かんだ夜だ。台風もたまには悪くないな。【法政大・平林花、イラストは千葉大・谷口明香里】

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