「“元気にしてますか?” 画面越しの君はあの頃キャンパスで見た勝気さがちょっとない」――。そんな歌詞から始まる、早稲田大の新しい応援歌が誕生した。曲名は「そして紺碧(こんぺき)の空へ」。そのミュージックビデオ(MV)が6月27日、動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿され、再生回数はまもなく5万回を突破。反響が広がっている。
早大の応援歌といえば、朝の連続テレビ小説で取り上げられ、話題となった古関裕而作曲の「紺碧の空」が有名だ。今回の楽曲にも、曲名や歌詞に「紺碧の空」というフレーズが登場する。著名な同曲のようにいつまでも歌い継がれてほしいとの思いからだ。
楽曲を制作すべく「紺碧のうたプロジェクト」を立ち上げたのは、早大の学生有志団体「SHARP♯」のメンバーたち。新型コロナウイルスの影響で思い通りの大学生活が送れない今こそ「早稲田への思いを歌にして明るい未来につなげたい」。そんな願いから準備を進め、5月下旬にプロジェクトを始動させた。
同団体が企画の軸として掲げたのは、早稲田全体を巻き込むこと。そのためには現役生だけでなく卒業生の協力も不可欠だと考え、作詞・作曲は同大OBの作曲家・杉山勝彦さんに依頼。その歌詞のもとになるフレーズやMVで使う写真をSNS上で募ったところ、現役生や卒業生からフレーズだけでも1000以上の応募があった。1曲分の歌詞をつづった作品も複数あり、企画したメンバーを驚かせた。写真は、学内の体育各部やサークル、キャンパス周辺にある学生御用達の飲食店からも提供してもらったという。
楽曲が完成し、そこからMVの撮影・編集に要した期間はわずか2週間ほど。出演者は現役生で、撮影は個別にリモートで行われた。完成した映像には、キャンパスに通えないもどかしい日々と、大学で過ごした思い出の日々とが映し出されている。MV監督を務めた稲場友亮さん(社会科学部3年)は「コロナ禍のやるせない現状と早稲田らしさの両方を表現できるよう工夫した」と話す。
この歌には、今の状況に屈せず一歩踏み出してほしいという思いと、何年たっても早稲田での学生時代を思い出して前進してほしいという思いが込められている。プロジェクト代表の遠藤伶さん(同学部4年)は「学生とOBが手を組み、今できる最善の作品になったと思います」と胸を張る。遠藤さんにとって早稲田とは、「自分のやりたいことを周りが絶対に肯定してくれる場所」。寄せられた多くのフレーズを読んで、改めて実感したという。
MVを視聴したのは、現役生だけではない。卒業生、東京・早稲田の街の人たち、受験生からも感動の声が届いた。まだ一度も大学に通えていない新入生も、この歌に励まされたことだろう。
現在公開中のMVは、ボーカルや演奏者が異なる2種。さらに、合唱バージョンやダンスバージョンも続々と公開予定だ。
入構制限が解けない早大キャンパス。希望を予感させる“紺碧のうた”が構内に響く日は、いつ訪れるだろうか。【東洋大・荻野しずく】