髪をバッサリ切ったときのこと。「何かあったの?」。みんな決まって聞いてきた。胸のあたりまであった髪が、肩の上でふわふわ揺れる。
月日を重ね、さまざまな思い出を共にした髪の毛は、傷んで疲れきっていた。死んだ細胞の集まりは、私の気持ちまで重くしているように感じて、美容室へ駆け込んだ。
店内のオシャレな雰囲気に、終始そわそわしながら、仕上がりを待つ。「はい、お疲れさまでした」。鏡越しに見た自分はまるで違う人物かのよう。美容師さんに魔法をかけてもらったみたい。自然と心まで軽くなった気がして、今にもスキップしそうな足取りで家路についた。
髪を切った理由なんてない。ただの気分だ。「髪は女の命」だと、どこかの誰かが言った言葉がふと、思い浮かぶ。黒髪のロングヘアが好き? そんなの、知らない。【津田塾大・畠山恵利佳、イラストは東洋大・荻野しずく】