実家の近所に、昔ながらの遊園地がある。アトラクションの所々にさびや傷があって、テーマパークのような派手さはまるでない。
一方でテレビ番組のロケ地として使われているのを見て、誇らしい気持ちになるのも事実だ。休日に来園者の歓声が風に乗って聞こえてくると、今日もそこで誰かの思い出の一ページが作られているのかも、とひそかに胸が熱くなっていた。
先日、その遊園地が90年以上の歴史に幕を下ろすというニュースが流れてきた。ずっと昔からうわさになっていたことだから、初耳だったわけではない。けれど、いざ新聞やテレビに取り上げられている様を見ると、あんなにからかっていたはずなのに、切なさがこみ上げてきた。
時の流れには逆らえないし、変わらないものはない。そう頭でわかってはいるのに、「あって当たり前」の存在がなくなってしまうことには、言いようのないさみしさがある。けれど、せめて最後まで、その姿を近くで見届けよう。さようなら、そして今までありがとう。【早稲田大・今給黎美沙、イラストは東洋大・荻野しずく】