私は来年1月から約半年間、デンマークに留学予定なのだが、語学の他に心配なことが一つある。それは、雑踏音がなさそうなところに住むということだ。
学校と寮は首都から遠く離れた自然豊かな場所にある。またデンマークの冬は寒く、暗くなるのがとても早いため、外を出歩く人が少なくなる。留学先を選ぶ際は授業内容ばかりを気にしていた。町に出るにもバスで20分かかる場所だと知ったのは、学校が決まった後だった。
私は静かなところで寝泊まりすることが苦手である。人の気配がなく、物音が全く聞こえないところにいると、寂しくなったりそわそわしたりするのだ。これは、私の幼少期からの育ちに起因する。私の実家は、下町風情が漂う商店街の一角にあり、家の周りは常に雑踏音でガヤガヤとしている。道行く人のザワザワとした話し声、自転車をガラガラと引く音、有線放送のスピーカーから流れるはやりの音楽、客を呼び込む大きな声……。また、夜になってもお店の光や街灯で真っ暗になることはない。
家に来る友人に「うるさくないの?」と聞かれるが、私にとってはこのガヤガヤとした場所こそが、落ち着ける空間なのだ。実家を離れて暮らすのは人生初。全く知らない静かな異境の地で暮らすのは、半年間だけとはいえ、正直とても不安だ。留学生活のことを考えると早くも憂鬱な気持ちになっている。だが、何事も挑戦だ。3カ月後には「あの時の心配は何だったのだ」と笑い飛ばしていることを願っている。【明治大・米林爽永】