読見しました 雨に魅せられて

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 「甘雨(かんう)だね」。祖母が窓の外を見ながら言った。スマホで調べる前に、祖母が「春の頃にしとしとと降る雨のことだよ」と笑いながら解説してくれた。「何それ、なんか可愛いね」。大変薄っぺらい感想を口にしてしまったが、土を潤し、草木を慈しむ雨を「甘雨」とは、なんて粋な表現なのだろうと思った。

 そのやりとりを思い出したのは、梅雨入りのニュースを聞いた時だった。甘雨以外に、独特の言い回しで雨を表現する言葉は梅雨くらいしか知らなかったと思い、気になって調べてみた。すると雨の呼び名には、山ほど種類があることが分かった。同じにわか雨でも、夕方と時間を限った雨は「夕立」、時間帯を問わず突発的に降るのは「驟雨(しゅうう)」という。また、青葉に降り注ぐものは「翠雨(すいう)」、秋の長雨は「秋霖(しゅうりん)」、別名「ススキ梅雨」という。

 降る時間帯や強弱、季節などによって、こんなにも違った印象の名前が付けられていることに驚いた。細かな変化が漢字の意味や印象に投影され、組み合わされている。そんな文学的な表現に想像が湧き立ち、胸が高鳴った。

 うっとうしい今年の梅雨も、ちょっとした知識でワクワクする瞬間が生まれた。祖母に感謝したくなったのと同時に、寝苦しい夏を楽しめるすべはないか、また聞きに行ってみようと思った。もうじき夏の盛りである。【日本女子大・安藤紗羽、イラストは東洋英和女学院大・柳明里】

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