すたこら 「相棒」に勇気もらう

すた・こら

 液晶画面が割れたテレビを横目に、小さなダイヤルを回しながら、耳を傾ける。東日本大震災の当日、12歳だった私が頼れたのはラジオだけだった。悲惨な情報が次々入る一方で、アナウンサーの「頑張りましょう」という声に、心からほっとしたのを覚えている。それ以来、ポータブルラジオは「相棒」になった。

 共に過ごすのは、いつも夜が更けてから。勉強中や眠れない時、お笑い芸人や若手ミュージシャンの番組を聴きながら過ごした。テレビでは遠い存在の有名人が「近所のお兄ちゃん」のように身近に感じる。そんな人との距離が近いラジオが、私は大好きだった。

 しかし大学生になると日常生活が忙しくなり、ラジオを聴く機会は激減。机の上でほこりをかぶっていく相棒の姿を見かねて、押し入れの中にしまい込んだ。

 そんな彼に再び頼ったのは、このコロナ禍だった。人と気軽に会えず、漠然と孤独を感じたためだ。電源を入れて深夜番組を聴き始めると、司会の男性がある曲を紹介する。YO―KINGさんの「Hey!みんな元気かい?」だった。「君は何をしている 雨はいつか止(や)むだろう」。誰かがしっかり応援してくれていると、その歌詞が私を勇気づけてくれた。みんな一人じゃない。仲間がそばにいるような安心感で満たされていく。

 まだまだ続く自粛生活。でも今できることに一生懸命であれば、必ず見てくれる人がいるのではないか。少し古びた相棒を前にそう考えていると、空が明るくなってきた。【国学院大・原諒馬】

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