新型コロナウイルス感染拡大防止のためおうち時間が増える中、動画投稿サイト「ユーチューブ」で、「パーカー/大学生の日常」という動画が人気を集めている。投稿しているのは、“一人ぼっち”で過ごすリアルな日常を記録、配信し続ける“ぼっち系”ユーチューバー、パーカーさん(21歳、実名非公表)だ。話題のユーチューバーであり、神戸大学に通う現役大学生でもある彼と、投稿作品の魅力に迫りたいと考えた。【学習院女子大・渋谷彩乃】
パーカーさんの投稿動画で人気があるのは、一人で○○をやってみた、という「一人○○」シリーズや、「大学生の一日」シリーズ、「料理」シリーズなど。再生回数が100万回を優に超える動画も多数あり、ファンの多さがうかがえる。記者もその一人だ。
独特の語り口で、まるでパーカーさんと会話しているかのように親近感がわく動画の数々。同年代だけでなく、親の世代からも「我が子を見守るように見ている」と支持を集める。ユーチューブのチャンネル登録者数は始めて2カ月で1万人、半年で10万人、そして1年で44万人と加速度的に増え続けている。
ユーチューバーとしての活動を始めたのは2019年6月。当時「スーツさん」という鉄道・旅行関係の投稿動画が人気のユーチューバーが注目されていて、「スーツさんの、大学生なのに自分自身の戦略で自立しているところに憧れを抱いた」のが、投稿を始めるきっかけだったという。
そんなパーカーさんの特徴は、投稿動画でいかんなく示されているように、「一人でいること=ぼっち」がまるで苦にならず、むしろ好きだという点だ。
もともと口下手で人見知りの性格だが、ぼっち生活に強く興味を持ったのは高校生の時。「クラスで一人で過ごす人を見て一匹おおかみのようでかっこいいと感じた」という。出身は京都だが、大学進学では「一人暮らし願望と、船や海が好き」という理由で、神戸大学海事科学部を選んだ。マリンエンジニアリング学科で船のエンジンなどについて学んでいる。
ぼっちは孤独で、寂しいのではないか?と思う人もいるかもしれない。しかしパーカーさんは胸を張って話す。「真っ白なキャンバスのようなもので、何もなく自由だから、いろんな可能性に満ちあふれている」
その言葉通り、パーカーさんのぼっち動画は、見る側に、一人だから見えるものがあること、一人で楽しむことの魅力を教えてくれる。特に人気の「一人で〇〇」シリーズは、「ぼっち=孤独、暗い」と引け目に感じている人々に、勇気を与えてくれていると感じる。
記者のお気に入りは、「大学生が一人で原宿の高級パンケーキを食べに行ってきた」。自分の動画にアフレコ式で後からナレーションを付けていく。パーカーさんが繰り広げる早口の解説と、自分の行動への突っ込みに、つい腹を抱えて笑ってしまう。
投稿を始めた頃は、一人で撮影することに恥ずかしさも感じていたという。しかし今では、その恥ずかしさも含めて自分らしさを出すことこそが動画の面白さであると気が付いたそうだ。これからも、「動画を見ようとクリックする瞬間の、みんなの期待を超えていきたい」と、新作を投稿し続けていくことへの意欲を語っている。
エッセー本も注目
投稿を通して、自分自身への気づきもあったという。一人でいることはもちろん好きなのだが、半面、「さみしがり屋なのかもしれない」という。多くのファンから寄せられるコメントが心の支えで、一人の時間を楽しみながらも、たくさんの人との出会いやつながりを大切にしている。
今後の目標は登録者数100万人。「より幅広い層の人々に動画を見てもらいたい。最近は家族や唯一の友達も出演してくれているので、そんな、人と絡んでいる動画も見てほしい」
そんなパーカーさんの活躍はユーチューブだけにとどまらない。今月17日には初エッセー「ひとりの時間が僕を救う」(KADOKAWA、1155円)が発売された。一人の時間を大切にしながら、孤独や弱さを強さへ変えてきた彼の魅力が詰まった一冊だ。
出版を提案された時は「自分が本を書くなんて想像できなかった。本を書ける自信もなく不安だった」というが、実際に話をしていく中で、前向きな気持ちになり、挑戦することを決めたそうだ。動画とは違い、感情や表情をストレートに相手に伝えることが難しい。文章で伝えたいことを表現するのは難易度が高かったという。そのエッセー本も注目されている。予約が始まってから、通販サイト「アマゾン」の売れ筋ランキングで書籍部門1位になり一時は在庫がなくなることも。記者自身も前もって予約を完了させた。届くのを待ちに待っている。
活躍が止まらないパーカーさん。取材をしている時の態度や表情は動画のパーカーさんと全く変わらず、素の自分を視聴者に届けていることが十分に伝わってきた。おうち時間が続く今、皆さんもパーカーさんの日常をのぞいてみませんか?