例年に比べ、早くも各地で桜が咲き誇っている。しかし今年は、異例の卒業シーズンの到来となった。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、各大学で卒業式の中止が相次いでいる。そこで、キャンパる編集部では、今春卒業の学生(大学4年生・大学院2年生)計40人にアンケートを実施。新型コロナの影響について、その実情を聞いてみた。(カッコ内は大学名・性別)
まず、卒業式が中止になったという回答は、全体の8割近くを占めた。そのうち、中止は「望ましい」とする回答が約7割。一方で、「人生の区切りをつけるためにも、式典は必要。挙行時間の短縮などで対応はできたはず」(東京外国語大・男)と大学側の判断に不満を表明する声も。地方就職者は、「同級生と集まれる機会は少なくなるだろうから、悔しさが残る」(東洋大・男)と残念がる。
また卒業式の中止に伴い、女子学生にとっては成人式に次ぐ晴れの姿「卒業はかま」に関する感想がいくつも寄せられた。式典で着るはずだったはかまのレンタルをキャンセルしたという女子学生は多い。晴れ舞台での着用こそかなわなかったものの、「卒業式が予定されていた日に友人と集まって、はかま姿で撮影会をする」(明治大・女)など、自主的に着用の機会を設ける学生も。はかま姿でその日を迎えたい気持ちは、2年後に卒業予定の記者も同感だ。
そして気になるのが、春休みを利用した卒業旅行。全体の約9割が「旅行した(する)」と回答。しかし、そのうち半数が予定していた行き先を変更したという。「ヨーロッパから沖縄へ」(中央大大学院・女)、「韓国から金沢へ」(早稲田大・女)のほか、「北海道から伊豆へ」(東京外国語大・男)など。感染リスク低減のため、旅先を海外から国内に変更した学生が多かった。新型コロナの不安はあるが、それでも友人同士の思い出づくりに卒業旅行は欠かせないようだ。
そのほか、謝恩会やサークルの懇親会が中止になるなどの影響が見られた。大学によっては「卒業演奏会がなくなり、一生懸命練習をしてきた出演者が気の毒」(昭和音楽大・女)との回答も。中止になったイベントの代替策として、「自主的に飲み会を開く」(東京学芸大・男)や「家でたこ焼きパーティー」(成城大・男)など、小規模ながらも学生主体となって集まろうとする動きも目立った。
「悲しいけれど仕方がない」。現在の心境について聞くと、ほとんどの学生がそう答えた。しかしこうした状況下で、「オンライン卒業式などの新たな試みによって、従来の慣習を見直すいい機会だと思う」(一橋大・女)という建設的な意見も出た。単に今年がイレギュラーな対応だったと済ませず、学生たちが気持ちよく学生生活を終えられるよう、大学側の今後の変革に期待したい。
思いがけぬ混乱に見舞われたこの3月。特別な思いで過ごす卒業生の皆さんが、一つでも多くの思い出を残せますように。【東洋大・荻野しずく、イラストも】