横浜市立大学は今年5月から、生態系を破壊せず、環境に配慮した漁業や責任ある養殖業によって生産された水産物を学内の生協食堂で提供する取り組みを始めている。そのプロジェクトの原動力となった同大の学生たちに、取り組みを始めたいきさつや狙いを尋ねた。
導入したのは、MSC(海洋管理協議会)とASC(水産養殖管理協議会)の認証水産物「サステナブル・シーフード」(略称・サスシー)。プロジェクトを立案したのは、SDGs(持続可能な開発目標)を活動テーマとする同大の学生団体「TEHs(テフズ)」だ。きっかけは、メンバーの一人が2020年度に受講した環境論入門の授業で、社内食堂でサスシー利用に取り組む企業の先行事例を学んだことだったという。
限りある水産資源を絶やさないために大学の食堂でも同じ取り組みができないか。団体内で検討を重ねた。ただ、大学では前例のない取り組みであったため、メンバーは大学、大学生協、認証の管理団体など関係先に自分たちで手当たり次第に連絡。サスシー提供実現のために必要な手順や知識をゼロから習得していった。そして先行企業の事例を参考に、生協食堂でのサスシー導入計画の案を固めた。「食べてSDGs実現に貢献する」プロジェクトの趣旨と同団体の熱意は学内でも高い評価を獲得。21年11月、大学生協の理事会でメンバーが計画を説明し、実施が正式に決まった。
生協食堂で提供するサスシー利用メニューは、開発担当のメンバーが主体となってレシピを考案。大学生協の職員と試作会を行って、量や値段、調理方法などを話し合った。認証水産物であるサスシーは、普通のシーフードに比べ値段は割高だ。適切に取り扱いつつ、価格をいかに抑えるかが課題だったという。
大学生協の全面協力のもと、こうした課題を克服してこれまでに提供したサスシー利用メニューは、エビ、白身魚、イカリングを使用した「サスシーミックスフライ丼」や、サスシーのアサリがたくさん入った「サスシーチゲ」など。メニューは月替わりで提供する。
生協食堂では、広告担当のメンバーが作ったチラシやポップを掲示したり、SNSで発信したりして在学生たちにサスシー利用メニューをPRしている。学生や教員からの反響は大きいという。今月5~6日に行われた学園祭では、4種類の限定メニューが生協食堂で一般客にも提供された。
プロジェクトを実現させたことについて、メンバーの国際教養学部4年、井上明香里さん(22)は「多くの方の協力がないと実現できなかった。環境問題やSDGsの取り組みをより多くの方に知ってもらうことに貢献できていると感じる」と手応えを語った。今後については「生協食堂で1年間、サスシー利用メニューを提供できることが決まっているが、取り組みを広げていくことが大事だと思う。来年以降もプロジェクトを継続したい」と抱負を語った。【明治大・奥津瑞季】