読見しました。:おひとりさま
「おひとりさま」で出かけると、世間の目の厳しさを感じる。一人で入りづらい店も多い。でも、僕は映画や食事は一人で済ませることが多い。一人で行っても楽しいものは楽しい。
だが、一人だとどうしても入りにくい場所がある。プラネタリウムだ。小さい頃、親に何度も連れて行ってもらったためか、今でも好きでたまらない。照明で照らされた白い半円のドームが、一気に星空に変わると、そこはもう別世界。落ち着いた声のアナウンス。ちょっと眠くなるくらいがちょうどいい。中央に置かれた投影機は魔法の道具だ。昔は、自分の部屋にも欲しくてたまらなかった。
プラネタリウムも進化を続けている。調べてみると、さまざまなプログラムがある。「世界一の星空」「すてきな音楽とともに」。心躍るが、きっとカップルか家族連ればかりだろう。いい年した男が一人で見るものではない。そう思うと、なかなか踏み出せない。せめて、「おひとりさま」と分からないように、最初から暗くしておいてほしい。まあ、上を向いているから、男一人だと注目されても、涙はこぼれないだろうけど。
先日、そんな思いを知った知人が、一緒に行こうと誘ってくれた。行ったのは、小さなプラネタリウム。近年流行の派手なものでなく、今夜見える星を解説員が説明する、シンプルなものだ。親に連れて行ってもらった、地元のプラネタリウムを思い出す。上映を終えて出た渋谷の街からは、星は見えなかった。そのうち勇気を出して、「おひとりさま」でまた行こうかな。【東洋大・佐藤太一、イラストは昭和女子大・小林千尋】