木々が紅葉した頃、学校からの帰り道で、もうこんな季節かと感じた。最近、アルバイトや学校で帰りが夜遅くなることが多い。街の様子を見る余裕はなく、季節を感じることは少なくなっていた。そんな時、私は小学生の頃通っていた、茶道教室を思い出した。
私が在籍した幼稚園は茶道を導入しており、小学生になっても続けてほしいと母が通わせていたのだ。
茶道はお茶の作法だけを習うのではない。四季の移り変わりを楽しむことができるのだ。季節ごとに飾る花や掛け軸が違う。春なら桜の模様の茶器、秋ならもみじが描かれた茶わんを使う。先生は季節の行事についてもたくさん話してくれた。たまに「来週までに冬の食べ物や行事を調べてきてね」と宿題を出され、一生懸命調べたものだ。
礼儀作法やマナーだけではなく、日本の伝統的な行事や地域の特産品など、学校では教わらないことを学べるのが本当に楽しかった。なにより、そこにはゆったりとした時間が流れていた。お茶をたて、お菓子を食べて、季節の物に触れることのできる、心落ち着く空間だったと感じる。
6年間通った茶道教室だが、中学でやめてしまった。しかし今になって思う。その後大学まで多忙な日々を過ごす中で、ほっと一息つける空間を求め続けていたのだと。もう一度茶道に触れて、あの空間を楽しみたい。【明治大・奥津瑞季、イラストも】