いざ卒業/下 新天地へ巣立つ時
実家住まいのひとも、1人暮らしのひとも、4月の入社に向け引っ越しをする4年生は、住み慣れた場所を巣立っていく。3人の卒業生のそれぞれの思いは。
苦楽共にした大親友 東洋学園大・釘田まこと
身長は私よりさらに6センチ小さい142センチ。顔も小さくいつもニコニコしている友人。互いに教職課程を履修していたため授業がよくかぶった。親友との出会いは大学1年生の時の体育の授業で彼女が声をかけてくれたから。
以来、大学生活の多くを彼女と過ごした。大学1、2年の時にはオーストラリアへ留学に2度一緒に行ったし、3年の時には共通の趣味のカメラを持って動物園や旅行などいろんな場所へ出かけた。そして、4年ではつらかった教育実習も励ましあった。面白いことがあると爆笑する彼女といるのが楽しかったし、悩みがあって相談していてもいつしか笑いにかわってしまう。
そんな彼女に度々救われてきた。特に教育実習は彼女がいなければ最後までやり遂げることができなかったと思う。大学内外でのさまざまな活動も彼女の支えがあったから思う存分打ち込めた。そして、一緒に出かけたり飲みに行ったり、たくさんの楽しいことを経験できた。卒業してからもきっと会うだろう。
そんな苦楽を共にした私の大親友。後悔していることが一つだけある。入学した頃、たくさん食べる子がかわいいとお互い信じていたことがあった。だから頑張ってラーメンの替え玉、ご飯のお代わりをたくさんしすぎた。お陰で当時の写真は2人とも顔がぱんぱん。何はともあれ、4年間ありがとう。そして卒業してもよろしくね。
坂の街、思い出重ねて 東京理科大・富永華子
長い1本の坂道。今日からここが私の通学路か。初めて新居から大学へと坂を下った日、想像していたよりも長めの距離と、これから過ごす年月の長さに気が遠くなったのを覚えている。今になって思えば、歩いて大学に通えること自体ありがたいこと。それなのに、当時の私はそんなことを思いもしなかった。
読み方も分からぬまま、坂のあるこの街へと来たのは4年前。ほとんどネットだけの情報を頼りに家を決めた。最初こそ期待に胸を膨らませた1人暮らしも始めてみると分からないことだらけ。初めて尽くしの1人暮らしの大学生活で、たんたんとこの街で過ごす日々が続いた。
季節の移ろいと共にそんな毎日にも少しずつ慣れ、徐々にこの街を知るようになった。メインの通りには多種多様な飲食店が軒をつらね、一歩横道に入ると石畳の道や昔ながらの店も多く残る。回り道をするたびに、新しい発見があった。また、活気あふれる夏のお祭りなどのイベントも、楽しみの一つ。朝晩と歩く坂道に、いつしかたくさんの思い出を塗り重ねていた。
あっという間の4年間を過ごしたあの坂も、今はもういない場所。毎日のように通ったスーパーも、お気に入りだった飲食店も、桜がきれいなあの場所も。今はまだ、寂しい気持ちの方が大きい。けれど、これからを過ごす場所でも、たくさんの人と出会い、日々を大切にしていくことだろう。
悩んだ家族の形 東京理科大・加藤真衣
大学生になったら、いろんなことをいっぱいしようと決めていた。アルバイトやサークル、インターンシップ。引っ込み思案で緊張しいだった私に、さまざまな人との出会いをくれた。追われるようにすぎる毎日が楽しかった。
だから、家族との関係が大学生活で一番の悩みになった。外にいる時間が長ければ、家にはいられなくなり、家事はできず、夕飯を一緒に食べられる日も限られる。時間をどう割くことが正しいのかわからず、戸惑った。
その葛藤はやがて、もし自分が家族を持ったらどうなるのだろうという不安にもつながった。外で仕事をして、家事も、もしかしたら育児もする。働きながら夕飯を作ってその上、私の世話を焼いてくれる母を見ていると本当にすごいと思う。私にできるだろうか。
そんな時、いろいろな家族について書いている小説家に出会った。彼女の書く小説からは感情があふれ、壊れそうになっている家族にさえも共感した。ほんのちょっとしたことで気持ちが温かく感じ、希望がわく。「あるべき家族」の姿などないと感じた。親世代と同じことをしなくていいという言葉に励まされた。自分のペースで進んでいけばいいと思えた。
春からは大阪で初めての1人暮らし。家族とは遠くなる。働きながら不慣れな家事をする。これから、少しずつ、自分の生活の形を作っていきたい。