読見しました 自分だけの色

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 私は、何色にも染まれる人間だ。これは、今まで広く浅く生きてきた私が出した、やや自虐的な自己評価だ。

 私は何か一つのことに没頭したことがない。勉強にしろ、部活動にしろ、趣味にしろ、全ての情熱をささげ、熱中したという経験がないのだ。だからといって、何事にも無関心というわけではない。部活動も勉強も、自分なりに真面目にやってきた。趣味も映画や音楽の鑑賞、読書など、幅広く手を出し、どのジャンルもそれなりに知識を蓄えたと思っている。

 しかしどの分野においても、この道一筋という人には遠く及ばない。興味を一時持てても、その道で大きな成果を収める未来図までは描けず、すぐにさじを投げてしまう。その繰り返しだ。私は、何か特定の対象に傾倒する、いわゆるオタクになれる人間ではない。だからこそ、自分の好きなことに熱中している人たちを見ると、どこかまぶしく、うらやましく思う時がある。

 もう私も大人だ。自分の行くべき道を選ばなければならない。しかし何色にも染まれる分、「自分だけの色」を持たない私は、大人になるにつれ「自分らしい」進路を選択する勇気がないと実感する。途方もない虚無感が自分を襲う。この感情をどう乗り越えたらいいのかは、まだ分からない。でも、いつかきっと「自分だけの色」に染まってみせる。【中央大・朴泰佑、イラストは早稲田大・榎本紗凡】

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