すたこら 事実と向き合う

すた・こら

 「コロナはただの風邪」。そんなメッセージが書かれたプラカードを手に、デモを行う集団がいる。彼らの多くは普通の格好をした大人たち。高齢の女性や、ベビーカーを押して参加する人もいた。一見すると普通そうに見える彼らはなぜ、ネット上で流布する荒唐無稽(むけい)な言説を信じるようになってしまったのか。

 後日、同様のデモに足を運び、参加者に普段接するメディアについて聞いた。情報源はツイッターなどのSNS。新聞やテレビは「ウソしか報じないから」見ないという。「テレビはね、ウソしか言わないんだよ」。両親とデモに参加した小3の男子に真顔でそう言われた時、スマホを初めて手にした頃の、小学生の自分の姿と重ねてしまい、少し恥ずかしくなった。

 動画配信サイトに夢中になっていたあの頃。嫌韓的な主張を行う配信者に出会った。当初はニュース解説を行うチャンネルだったが、配信者の主張が右傾化するとともに、自分も同調していった。新聞やテレビの論調を疑い、ヘイトスピーチに違和感を抱かない時期もあった。中学生の頃まで、そんな主張を真剣に信じていた。

 ネットは確かに便利だ。しかし閲覧するサイトによっては、扇動的な主張に感化されてしまう危険性があることを、私は身にしみて知っている。「正確な情報を発信する」ことは簡単なようで難しい。しかし今の私には、記事の書き手として正確な情報を発信し続ける責任がある。過去の自分を教訓に、ただひたすら事実と向き合いたい。【上智大・沖秀都】

PAGE TOP