すたこら 新しい挑戦の中に

すた・こら

「未来が不確実なコロナ下こそ、不確実性に挑むべきだよ」。昨年ある企業の代表に取材で出会い、その一言に衝撃を受けた。ちょうど海外留学を断念した直後。こんな理不尽で先行きが不確実な中、何にどう挑むのか。答えが知りたくて休学し、インターン生として飛び込んだ。

 そこは「ふるさと食体験」というサービスを手がける社員約25人の新興企業。地域の食材を参加者の家に届け、生産者と交流するオンラインイベントの企画運営を行っている。食を通じて会員同士が対面交流する場を運営していたが、コロナで昨春、やむなく休止。その状況下で始めた、まさに新しい挑戦の途上にいた。

 代表はいつも「ワクワクすること、前例のないことをやろう!」と笑う。すぐ守りに走る私には耳が痛い。ある日「イベントの進行役をやってみない?」と打診を受けた。企画の出来を左右する大役に不安もあったが、「やります」の一言が口をついて出た。

 ぶっつけ本番、約2時間の生配信。イベントが始まると、台本から外れてアドリブを楽しむ自分がいた。「素晴らしいです。時々面白い切り口の質問もしてくれて、楽しかったです」。イベント後に参加者からもらったコメントを読んで、新しい世界が開けた気がした。

 予定も理想もあっけなく壊れてしまう時代だからこそ挑戦する。シンプルだが、その中に次の可能性があることを教わった。1年間のインターンを終えた今、まるで見えない未来にワクワクしている自分がいる。【上智大・川畑響子】

☆2021年9月28日 毎日新聞夕刊(とうきょう版) 掲載

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