すたこら 時が過ぎるのを待つ

すた・こら

 大学3年になり、就職活動で動き出した。企業が主催する夏季インターンシップ(就業体験)の応募に追われる。そして期末の試験勉強。こんなにも忙しい時期に僕は人を好きになり、フラれた。

 今日もけだるい一日が始まった。朝起きてため息をつき、重い足取りで風呂場に行き、シャワーを浴びる。食欲はないが、パンを牛乳で流し込み、部屋に戻る。大好きな音楽もうっとうしい。オンライン授業に出席する気力もない。

 彼女は、他に好きな人がいるのだという。だったら最初から遊びの誘いについてこなければよかったのに。帰り際に彼女が言った「また行こうね」を真に受けて、喜んでいた自分を責める。夢中になると社交辞令なんて気付かないものだ。

 いっそ出会わなければよかった。パソコンに向かう後ろ姿の彼女。振り向いたその目を見て、一目ぼれした。同じ大学生なのに大人っぽく見えて、ちょっとした仕草、話し方、全てが可愛かった。一緒に見に行った映画や、いろいろ調べて誘ったランチ。でも、好きな音楽を聞いたのは失敗だった。「失恋ソングばかりだよ」と一言。元彼が忘れられないのだという。結局、機先を制されて「好きになれない」と言われてしまった。

 片思いを楽しんでいた頃の思い出に浸っているうちに日が暮れてきた。夕食も食べずにまたシャワーを浴びる。これがいい思い出になる日は来るのだろうか。何をするのもおっくうなまま、一日が終わる。今は、ひたすら時間が過ぎるのを待っている。【埼玉大・佐藤道隆】

PAGE TOP