なにコレ!? オンライン開催の慶応大・三田祭 CG駆使、演出で魅了

 今年の学園祭は、新型コロナウイルスの影響で、軒並み中止かオンライン開催となった。前代未聞の状況下で、“学祭”に情熱を燃やす学生たちはどう行動したのか。11月22、23日に行われた慶応大学の「三田祭」は、近年では約20万人の来場者数を誇った国内最大規模の学園祭だ。今回、史上初のオンライン開催となった第62回三田祭で、「画面越しに見て楽しめる学園祭」を追求した目玉企画を取材した。【東洋大・荻野しずく】

 23日午後、三田祭公式サイトの特設ステージをクリックすると、真っ黒な画面上に浮かび上がったのは「次世代の文化祭を存分にご堪能ください」とのメッセージ。それから約20分間、デジタル演出と融合した、学生たちによるパフォーマンスが画面の向こう側で繰り広げられた。これが「かつての学園祭の常識を覆す公演」と銘打たれた三田祭の注目企画、「Project LEMIT(レミット)」だ。

 このプロジェクトには、主催する三田祭実行委員会と、公演に出演する4団体、演出を担う1団体の計6団体が関わった。LEMITとは、「limit(制限)」と「emit(放出する)」をかけ合わせた言葉。「制限があっても、学生の思い・感情・エネルギーを届けたい」という願いが込められている。

燃えさかる炎の演出とダンスが一体化した「Revolve」のステージ=公演映像より

逆境でも前向きに

 企画の立案者は、同実行委の委員でありLEMIT代表を務める、経済学部2年の木村舞香さん(20)。年初から、次の三田祭では「多団体の学生を巻き込んで一つの公演を作り上げたい」と考え準備を進めていたそうだ。6月中旬に三田祭のオンライン開催が決まった際も、周囲の悲観的な声をよそに木村さんは前向きだった。「オンラインの可能性を自分たちが開拓できるかもしれないと思うと、うれしかった」と話す。

 とはいえ、そこからの道のりは険しかった。生で見るからこそのステージの良さを、オンラインでどう再現するか。失われてしまう部分は、どんな要素で補完するか。それらの課題と向き合い迫力のある照明や映像、無観客の客席を生かした「誰でも、家からでも楽しめる」演出に挑戦した。

 最も特徴的なのは、背景に設置した巨大LEDビジョンだ。公演ではそこで、各団体のパフォーマンスに合わせてCG(コンピューターグラフィックス)を効果的に用いたフルカラーの映像を表示。ほかにも、視聴者に臨場感を味わってもらうためドローンでの空撮を取り入れるなど、さまざまな工夫を凝らした。

資金不足は募金で

 しかし、これらの演出の実現にあたって、例年の予算10万円ではとても足りなかった。そこで実施したのが三田祭史上初のクラウドファンディングだ。慶大の現役生や卒業生、他大学の学生などから、幅広く支援してもらったという。こうして目標を上回る約115万円の資金調達に成功。公演に向けて自信になった。

 十分な予算で最先端の技術による演出を担当したのは、学生団体「sense.」のメンバーたち。同団体は慶大SFC(湘南藤沢キャンパス)を拠点に、デジタル技術を駆使した創作活動を行っている。今回は木村さんの依頼で参加したが、キャンパスごとに学園祭を開催してきた慶大で、SFCの団体が三田祭企画に携わるのは珍しいという。キャンパスをまたいで一つの作品を作り上げる。そんな異色さも、この企画の魅力だ。

 公演に出演した4団体のジャンルは、フリースタイルバスケットボール、フュージョン(音楽)、ダンス、津軽三味線。デジタル演出との親和性や学内の知名度を踏まえて、実行委が団体を選出したという。会場は三田キャンパス内の西校舎ホールで、三田祭当日は、前日にステージ撮影した映像を編集して配信した。公演を無事に終え、LEMITの一員である総合政策学部2年の夏目梨沙さん(20)は「型にはまりつつあった今までの三田祭の形が、いい意味で崩れたのでは」と充実感をにじませた。

 ただ、認知度の点では課題が残る。公演配信時、視聴人数は200人未満だった。例年であれば、ステージからあふれる熱気に引きつけられて訪れる人も多いが、オンラインではそうした集客は難しい。メンバーたちもそのことは想定していたが、「もう少し多くの人に見てもらいたかったですね」と本音をこぼす。

ネット上に映像記録

 後日、公演の映像記録はユーチューブの三田祭公式チャンネルに収録された(https://www.youtube.com/watch?v=YXwq8umU1aQ)。そのため当日は視聴できなかった人からも、うれしい感想をもらえたそうだ。こうした反響に、「届く人にはちゃんと届いていた」とうなずくメンバーたち。公演の手応えは感じている。

 今年オンラインに対応したことで、キャンパスとオンラインを併用した学園祭の可能性も見えてきた。LEMITを引っ張ってきた木村さんは「企画の幅が広がったと思う」と、さらなる進化と課題の克服に期待を寄せている。革新的な挑戦をやり遂げた彼らの思いは、きっと今後の三田祭につながっていく。熱いパフォーマンスを、その目で確かめてみてほしい。

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