なにコレ!? :学生制作のゲーム「密です3D」 密集防ぐ知事を体験

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密集した人々を追いかける、女性キャラクターの都知事(『密です3D・密集団を解散せよ』の1場面から。坂下さん提供)

新型コロナウイルス感染拡大防止のために避けるべき「密閉・密集・密接」を表す「3密」は、すっかりなじみのある言葉となった。特に4月上旬、殺到する報道陣に対して小池百合子・東京都知事が「密です」と連呼したことがきっかけとなり、ネット上に「3密」を題材とする創作ゲームの投稿が相次いだ。「密です3D・密集団を解散せよ」も、その中の一つ。ゲーム内容を告知したツイートが17万回も引用されるなど、大きな話題を呼んだ。

 そんな「密です3D」は、プレーヤーが都知事風の女性キャラクターとなり、町中で密集している人々を追いかけて注意を促し、間隔を空けさせるアクションゲーム。都知事が空を飛び、上空から密集団を探すという面白い仕掛けもある。

 制作者は米コーネル大大学院2年の坂下申世(もうせ)さん(24)。ニューヨークに住む坂下さんだが、「『密です』発言は米国にいても耳に入った」と、発言の話題性の高さがうかがえる。外出制限による家での時間を持て余し、気分転換にゲームを作り始めたという。

 「密です3D」は、立体的な映像で楽しめることもあり、とにかく質が高い。そのうえゲーム制作から紹介動画作り、無料公開(4月22日)までわずか4日間でこなしたというのだから驚きだ。

 公開時にはレベル7までだったステージを50まで増やし、獲得したコインでキャラクターの衣装を変更できるようにするなど、公開後も改良を重ねている。さらにスマートフォンアプリとしての配信も予定しており、より手軽に遊べるようになりそうだ。

 坂下さんは現在、コーネル大の大学院で、複数の人が共同で遠隔操作を行えるようにする「共同遠隔操作」の仕組みの開発について研究している。その前に在学した筑波大では、落合陽一研究室で「遠隔人形劇」の開発を行っていた。人形劇は通常、舞台の下で人形を操作して表現する。一方遠隔人形劇は、人が機器を装着することで自分の動きを人形に反映させることができるという。

 「現在、遠隔での会議は可能だが、離れた場所にいる人々が共同で物理的な仕事をこなす仕組みは整えられていない。ロボットなどを用いることで、可能とする環境を生み出したい」と目標を語る。コロナ禍で生活が変わるとされるこれからの時代、カギとなる研究になるかもしれない。

 3月から外出制限が続くニューヨーク。坂下さんは「自分自身コロナの影響で学校に行けず、家にある機材で研究を重ねる日々が続いている」と話す。「家で退屈な人は、ぜひこのゲームで遊んでほしい」。実際に、親子で楽しんだというコメントももらったそうだ。

 また、5月29日から「『密です3D』特別応援メンバー」の募集をネット上で始めた。メンバーには資金提供の額に応じてオリジナルグッズが提供され、自身をゲーム内に登場させることもできる。集めた資金はこれからのゲーム開発の費用に充てるほか、「一部はコロナの影響を受け苦しんでいる人たちに寄付したい。具体的には医療団体への支援、子どもたちの教育支援に使用する予定だ」という。【東京大・高橋瑞季】

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