読見しました:「遠い日の夢」

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とあるビルを訪れた帰り道。ガラスの向こう側、1着のドレスが目に留まった。腕から上半身にかけてレースがあしらわれた、真っ白なウエディングドレス。派手な装飾はないものの、とても美しかった。建物の奥をのぞくと、リボンや花が装飾された華やかなドレスもある。ふいに、遠い日に置いてきた夢を思い出した。

 幼い頃からバレエの発表会で、キラキラとした衣装を着る機会が多くあった。違う素材の布が何層にも重ねられ、たくさんのビーズやストーンが付けられた衣装たちは、舞台上で照明を浴びると、より一層光り輝く。いつしか、舞台衣装に関わる仕事に、憧れを抱くようになった。

 高校生の時には、体育祭で行う仮装の衣装係に立候補。テスト勉強そっちのけで、ミシンに向かっていたことも。自己流で衣装のジャケットやスカートを仕立てた。

 だが服飾の世界に飛び込む勇気もなく、一般の大学へ進み、今がある。進路を考えたとき、将来の選択肢を狭めてしまうのが怖かったのだ。

 親にねだって買ってもらったミシンも、自室のクローゼットの奥に眠ったまま。もう一度、活躍する日は来るのだろうか。【津田塾大・畠山恵利佳、イラストも】

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