卒業すた・こら/上

春、記者たちの旅立ち

 すっかり春の日差しになり、別れと出会いの季節がやってきた。今年は新型コロナウイルスの影響で卒業式が行われないなど世間は騒然とした中での卒業シーズン。キャンパる編集部でも苦楽を共にした6人の記者が巣立つ。それぞれが今の気持ちをつづった。


自分を信じて

 私には3歳からお付き合いしている病気がある。それは悪くなると関節を自由に動かせなくなる。長年付き合う中で一番もどかしいのは、行動を制限する必要があること。小学生の時は体育の授業に参加できないことも多々あった。また、冬の朝は関節がカチンコチンになるため苦労は尽きない。だが薬を飲めば症状は抑えられたから、安心して過ごしていた。

 しかし、成長していくうちに薬が徐々に合わなくなった。症状が出る日は増えたが、大学生にもなると悪化しやすい行動はつかめてきている。アルバイトは軽い商品を扱うところを選び、週に1度は休みを設けて疲労を回復する。気づけば同じことの繰り返しだった。

 卒業を目前にした昨年12月のこと。友だちとの間でスノーボードに行く話が浮上した。就職前に悔いなく遊びたい思いから参加を決意。とはいえ病と相性が悪いと知っていたから、悪化したら今回で最後にすると決めていた。

 いざ滑ってみると、少し進んでは転ぶの繰り返し。体を打つ度に明日の体調が不安になった。しかし、翌日になっても症状は出ず。私が思っていたよりも、体は強かった。どうやら、行動を制限していたのは自分自身。弱かったのは気持ちだった。

 来月から社会人になる。何かを言い訳にして、やりたいことを諦めるのはもったいない。これからは自分を信じて、新しいことにも向き合っていきたい。【昭和女子大 小林千尋】


ウォルトの言葉、胸に

 キャンパるに入ってから半年もたたないうちに、キャップという運営の立場になった大学3年の春。誰よりも責任感とプライドを持って取り組まなければ、と意気込んでいた。だが、形式的には仕切る立場でありながら、知らないことだらけ。相談されても役に立てないことばかり。仕事も分かっている気になって、後々ボロが出る。そもそも経験も知識もない自分には、周りをまとめる人間としての素養が、明らかに足りていなかった。

 「正直に自分の無知を認めることが大切だ。そうすれば、必ず熱心に教えてくれる人が現れる」。このウォルト・ディズニーの言葉に出合ったのはそんな時だった。

 知らないことは恥ずべきことではない。無駄なプライドは捨て、謙虚に周りから学ぶこと。地道に経験を積めばいい。当たり前だが、忘れかけていたことを思い出した。そして、無知な自分を支えてくれたのは、同級生たちだった。

 彼女たちは僕よりもはるかに文章表現が豊かで、経験も長い。キャンパるのことで朝まで語り合うこともしばしば。何でも皆に相談すれば、すぐに駆け付けてくれて的確な助言をくれた。

 「ウォルトの言葉、本当だったんだな」。いま振り返れば、仲間に支えられながら積み重ねてきた一日一日を鮮明に思い出す。

 春からはその言葉を糧に、夢だったレジャー業界で働く。新天地で、またゼロからのスタートだ。何も知らない真っさらな自分で、ぶつかっていく。【成城大・風間健】


片っ端から試した日々

 母は子供が大好きな保育士。自転車好きの父は競輪の仕事一筋。私には人生をかけてやりたいことなど何もなかった。とりあえず大学に行けば将来やりたいことが見つかるんじゃないか。大学に行く動機はそんな曖昧なものだった。

 自分のやりたいことを探し求めて、興味を持ったものには片っ端から手をつけた。初めての海外で、世界の広さと文化の多様さに衝撃を受けた。警備のアルバイトでは、通りすがる人々のさりげない優しさ、冷たさを感じた。留学先のバンコクでは、都市の変化と、変化に翻弄(ほんろう)される人々の存在に気づいた。

 タイ料理屋のアルバイトでは、多国籍の人々と働くことの難しさや面白さを知った。卒論研究を通して漁師やダイバーの生き様に触れた。キャンパるの取材でさまざまな人と出会った。日本で暮らす難民の人々、彼らを支える大学生、原発事故で暮らしが一変した人々。

 同じ世界に、たくさんの人がいて、たくさんの価値観がある。知れば知るほど、途方もなく複雑な現実に目がくらんだ。自分の価値観がどこにあるのか、なにをやりたいのか分からなくなる一方だった。

 そんな私に、「自分たちの思いを知ってほしい」「忘れないでほしい」という思いを、ふとした瞬間に打ち明ける人々がいた。普通に生活していたら出会わなかった人々、この先出会うことはないかもしれない人々。だからこそ、一つ一つの出会いで目にしたもの、聞いた声を形に残したいと、強く思った。

 4月から記者として働く。複雑な現実に、その中で生きる人々の声に向き合い続けるために。【一橋大・梅澤美紀】

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