すたこら:大人の事情


 「ケンカって、いつからしてないかな」。先日、そんな会話を友人とした。面と向かって怒ったり、嫌という気持ちをぶつけたりした出来事は、小学生の頃以来思い出せない。逆にどうすれば周囲とうまくやっていけるか、「協調性」は最初に知った大人のルールだった。

 少しずつ見えてくる「大人の事情」に疲弊してしまう。目的や将来のため、役に立つ経験が求められる。社会のきまりや他人の評価が暗黙のうちに意識の中に入ってくる。最近の若者は社会課題に関心がないと言うけれど。「社会性」や「協調性」。周りに同調して、嫌なことからじょうずに目をそらすことを教えてくれたのは大人ではないか。大学生という身分は、子供と大人の間のようで、少し窮屈だ。

 しかし、新聞やテレビのニュースを見ると、自分の生活とはかけ離れた複雑な社会の事象を知る。取材をすると、責任感を持って社会を変えようと行動する同世代に出会う。それに比べたら、私の鬱々とした窮屈さなんて、ちっぽけな言い訳にすぎない。でも、責任感がないままに大人の世界に片足を入れた今の私に、一体何ができるのだろう。

 あと1カ月でハタチになる。大人の仲間入りはうれしいような、まだ早いような複雑な心境。それでも自分の中に流れる時間は止まることがない。だからこそ社会問題に懸命に向き合ったり、大人のルールからたまには目をそらしたり、今しかない猶予期間を大切にしたい。もう少しゆらゆらと悩みながら、この窮屈さを漂っていたい。【上智大・川畑響子】

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